光を描いた日本画家
菱田春草の物語
菱田春草の物語
Shunso

Shunso
遡ること約120年前。
幾多の動乱を経て、江戸から明治への時代の大きな移り変わりに共鳴するように、伝統的な日本画の世界において、新たな変革の旗手となる一人の青年が現れた。
その青年の名は、菱田春草。
そんな一人の画家の物語を辿ってゆく「光を描いた日本画家 菱田春草の物語」。
最終編の題名は、「遥かな光の先に」。
今回の物語では、異国からの旅から戻り、日本での制作の中で手にした遥かな光の記憶を紐解いてゆきたい。
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the light
the light

殉教者のまなざし
欧米への長い旅を終えて日本に戻って来た、春草と大観は、これまでの制作拠点であった東京から離れ、新たな制作拠点として茨城への移住を決める。
またもそれは、岡倉天心からの誘いであった。
岡倉天心は、彼らに茨城県五浦に新しい美術院を作り、ここを『日本のバルビゾン』のような場所にし、大いに絵画の研究をしてはどうかと誘ったのだ。
バルビゾンとは、19世紀のフランスにおいて、作られた芸術村の呼称。
代表作「落穂拾い」で知られる画家・ミレーを代表とする風景画家の一派がフランスのとある村に集い、自然主義的な風景画を描いたことで知られる村だ。

また欧米で受けた高い評価とは裏腹に、彼らの日本での評価は、帰国後も以前と変わることなく厳しかった。
そのため東京では、耳にしようとしなくとも、どうしても世間の厳しい評価が耳に入って来てしまう。
そんな状況の中において、新しい表現を切り拓くことを目指す彼らにとっては、自らの表現に没頭出来る願ってもない環境だったとも言えるだろう。
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Reference :
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「菱田春草」
- 著者:
- 近藤 啓太郎
- 出版:
- 講談社
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「不熟の天才画家」
- 監修:
- 鶴見香織
- 出版:
- 平凡社
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「菱田春草 生涯と作品」
- 著者:
- 鶴見香織
- 監修:
- 尾崎正明
- 出版:
- 東京美術
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text / select :HASは、多様な美しい物語を通して「物語のある暮らしを提案する」ライフストーリーブランド。 ライフストーリーマガジン「HAS Magazine」、クリエイティブスタジオ「HAS Couture」を手掛ける。