ウジェーヌ・アジェと
パリの記憶
パリの記憶
Paris
Paris

Paris
1920年のある日。
一通の手紙がフランスの文部省美術局に届く。
「拝啓 私は20年以上の間、パリのすべての古い通りの写真を撮り続けてまいりました。
これらの膨大なコレクションは、すでに完成しています。
私は、すべての “古きパリ” を所有しているといえます。
しかし、70歳という高齢になり、私には相続人も後継者もいません。
これらの写真が価値の分からぬ者の手に渡り、利用されることなく、いつか失われてしまう将来を思うと心配で、苦しくもあります。」
淡々とだが、どこか切実な想いが込められたその手紙は、ある1人の写真家から送られて来た。
その写真家の名前は、ウジェーヌ・アジェ。
失われつつある、古いパリの街並みを30年にわたって撮影した写真家だ。
後にその功績が認められ、近代写真の父とまで称されるのだが、生前に大きな評価を受けることはなかった。
一体なぜ彼は、パリの街をただ一人撮り続けたのだろうか。
その疑問を紐解いてゆくと、そこには一人の写真家が歩んだ、数奇な人生の物語が流れていた。
アジェの眼差しの先にある、古きパリの記憶を辿りながら、一人の写真家の歩んだ物語を辿ってゆきたい。
- text HAS

Paris
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Reference :
-
「アジェのパリ」
- 著者:
- 大島洋
- 出版:
- みすず書房
-
「ウジェーヌ・アジェ回顧」
- 企画・監修:
- 東京都写真美術館
- 出版:
- 淡交社
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「ウジェーヌ・アジェ写真集」
- 編著:
- ジョン・シャーカフスキー
- 翻訳:
- 原信田実
- 出版:
- 岩波書店
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「写真幻想」
- 著作:
- ピエール・マッコルラン
- 翻訳:
- 昼間賢
- 出版:
- 平凡社
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text :HASは、多様な美しい物語を通して「物語のある暮らしを提案する」ライフストーリーブランド。 ライフストーリーマガジン「HAS Magazine」、クリエイティブスタジオ「HAS Couture」を手掛ける。