ウジェーヌ・アジェと
パリの記憶
パリの記憶
Paris

Paris
失われつつある、古いパリの街並みを30年にわたって撮影した写真家ウジェーヌ・アジェ。
後にその功績が認められ、近代写真の先駆者と父まで称されるのだが、生前に大きな評価を受けることはなかった。
そんなアジェの眼差しの先にある、古きパリの記憶を辿りながら、一人の写真家の歩んだ物語を辿ってゆく「ウジェーヌ・アジェとパリの記憶」。
後編の題名は、「残された永遠の記憶」。
今回の物語では、アジェが近代写真の父と称されるまでに至った運命の出会いを紐解きながら、彼の後半生の物語を辿ってゆきたい。
- text HAS
Memory
Memory

運命の出会い
古きパリを写真に残すこと。
そう決意をした40歳の頃から、30年近くもの歳月が過ぎていた。
青年時代に大海原を旅した過去は、遠い記憶の彼方へと過ぎ去りつつあった。
パリの街では、アジェは「アジェおやじ」、「お人よしのアジェ」と呼ばれていた。
表現者ではなく、職人としての写真家を志したアジェは、彼が望んだにせよ、望まなかったにせよ、写真家として目立った名声を得ることもなく、ひとりの街の写真家として、その生涯を終えようとしていたのだった。
だがその暮らしは、決して悲観的なものではなかった。
派手ではなかったが、慎ましく幸せに暮らしていたようにも感じられる。
役者時代に出会った、同じく役者であった妻・ヴァランティーヌとパリでの日々を穏やかに楽しみながら。

そんなアジェのもとに、ある一つの運命の出会いが訪れる。
それは、1925年のある日のこと。
アジェが68歳の頃のことであった。
- text HAS
Reference :
-
「アジェのパリ」
- 著者:
- 大島洋
- 出版:
- みすず書房
-
「ウジェーヌ・アジェ回顧」
- 企画・監修:
- 東京都写真美術館
- 出版:
- 淡交社
-
「ウジェーヌ・アジェ写真集」
- 編著:
- ジョン・シャーカフスキー
- 翻訳:
- 原信田実
- 出版:
- 岩波書店
-
「写真幻想」
- 著作:
- ピエール・マッコルラン
- 翻訳:
- 昼間賢
- 出版:
- 平凡社
-
text :HASは、多様な美しい物語を通して「物語のある暮らしを提案する」ライフストーリーブランド。 ライフストーリーマガジン「HAS Magazine」、クリエイティブスタジオ「HAS Couture」を手掛ける。