古の記憶と豊かな自然に出会う

奈良駅を降り、歩くこと数分。
都市の中にあるとは想像もつかないほど、豊かな自然に包まれた公園が目の前に広がる。
この公園は、奈良、そして日本を代表する名勝として知られる、奈良公園だ。

奈良公園が占める範囲は広く、園内には、春日大社、興福寺、東大寺、国立博物館、正倉院などの数多くの歴史的文化遺産を抱えている。
さらに奥地には、千年以上もの長きに渡り守り続けられ、太古の森の姿を今に残す「春日山原生林」がある。
樹齢1000年とも言われる美しい木々に覆われ、その木々の間から降り注ぐ木漏れ日が、この場所の穏やかな時の流れを演出している。

遥か万葉の時代からこの地は、景勝地として人々の間で親しまれてきたという。
そうした古の記憶に呼応するように、園内には今なお、思い思いの在り方で、穏やかな時を過ごす人々に出会うことが出来る。

静かに読書をする人の姿や木陰で掛け絵を描く人の姿、ただ静かにもの想いに耽る人の姿。
そして、そんな人々の間を野生の鹿が自由に闊歩し、群れ遊んでいる。

古の記憶が流れる奈良公園には、豊かな自然と文化が調和する、理想郷のような穏やかな時間が今も昔も変わらず流れ続けている。

ただゆっくりと時を味わう贅沢。
私たちが置き忘れてしまった大切な余白がこの場所では、時を越え、穏やかに紡がれていた。