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HAS Magazineは、メンバーシップにご登録頂いた皆様へお届けする様々な物語をご準備しています。ご利用スタイルに応じて、お選び頂ける各種プランがございます。
旅に出るように、まだ見ぬ美しい物語との出会いをお楽しみ下さい。

星降る夜空に In the starry night sky
HAS Magazineでは、読者の皆様に継続して美しい物語を届けるために、持続可能な独立したメディアの運営を指針とし、広告収益ではなく、メンバーシップを軸とした運営を行なっています。

私たちが目指しているのは、小さな星々の瞬きを紡ぐように、雑誌というメディアを育んでゆくこと。
こだわりの一杯の珈琲を届けるように、自らの感覚を大切に深めながら、ひとつひとつの物語を丁寧に紡ぎ、皆様のもとへと届けてゆく。

そして、それぞれの物語が読者の心を灯し、お読み頂く方々が一人、また一人と少しずつ増えてゆく。
それはまるで澄み切った夜空に、星々がひとつずつ瞬いてゆくように。

そうして散りばめられた星々の光を集め、また新たな光を物語に宿し、皆様のもとへと届けてゆく。
そんな風景が広がってゆくことを、私たちは想い描いています。

この取り組みは、とても時間のかかる方法かもしれません。
しかしだからこそ、読者の皆様と共に歩みながら、様々な想いを物語に重ねてゆくことが出来ると考えています。
そして、その歩みこそが多くの人々の心に響く物語を生む力になると。

私たちが目指すメディアの在り方は、以下のブランドブックにてお読み頂けます。
是非そちらも併せてご覧頂けますと幸いです。

この風景を描く旅は、きっと長い旅路になります。
読者の皆様とこの旅を共に出来ることを願っています。
無数に広がる物語が描く、星降る夜空に出会う旅へ。
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二つの光に出会う旅

The Two Lights

先日のお知らせ「新たな年の羽音」の文章の中でご案内した、本年から始まる新たな旅の指針となる、ある二つのテーマ。
本日は、そのテーマの内容について、「HAS Magazine ハス・マガジン」の理念にも繋がる「ライフストーリー」という言葉の中にある「ライフ」の意味を紐解きながら皆さんにお話しさせて頂きます。

今回の文章は、これから始まる新たな旅のしおりとなるような文章です。
お読み頂くことで、この先皆様にお届けする様々な物語をより深く感じて頂けるきっかけになると考えております。
ぜひ最後までお付き合い頂けますと幸いです。
それでは、「ライフ」という言葉が持つ意味について掘り下げてゆくことから、今回のお話を始めてゆきます。

「ライフ(Life)」という言葉は、大きく分けて三つの意味を持っています。
一つ目は、「生命」。二つ目は、「人生」。
そして、三つ目は、「暮らし」という意味。

それぞれの意味をもう少し深く掘り下げてゆくと、一つ目の「生命」は、ありとあらゆるものに宿る命を表す言葉。
時代や文化によって、その領域は異なりますが、地球上、時には宇宙をも貫いてゆくような膨大な命の広がりを表す言葉でもあります。

二つ目の「人生」は、私たち「人」の一生の時間と営みを表す言葉。
そして、三つ目の「暮らし」は、私たちの日々の生活を表す言葉です。

こうして改めて「ライフ」という言葉を紐解いてゆくと、「生命」は遥かなる時の流れを、「人生」は人が歩む数十年の時を、「暮らし」は日々のひと時を、というように層を重ねるように時間の長さが変化していることに気付かされます。

そんな多様な意味を持つ「ライフ」という言葉。
しかし、普段の暮らしの中で、私たちが「ライフ」という言葉を耳にする時、不思議と一つ目の「生命」の意味を意識することは、多くはありません。

「ライフスタイル」、「ライフデザイン」、「ライフステージ」など、近年良く耳にするこれらの言葉が語っているのは、あくまで「人生」と「暮らし」について。
いかに「人生」をより良く設計し、実り豊かな「暮らし」を描いてゆくのか。
それぞれの言葉に託されているのは、一人一人が歩む数十年の時間への想い。
そこで「生命」について語られることはありません。

ですが、過去を遡り、歴史を紐解いてゆくと、かつての人々にとって「ライフ」とは、何よりもまず「生命」が中心として考えられていたことに気付かされます。
まず「生命」があり、その中に一人ひとりの「人生」があり、そして「暮らし」があった。
「生命」、「人生」、「暮らし」のそれぞれが分かち難く深く結びついていたのです。

それは、かつて人々が自然と共に暮らしていたことが大きな理由なのだと思います。
自然の恵みに生かされていた人々にとって、豊かな「暮らし=ライフ」を考える時、必然的に生命全体への意識へと繋がっていったのだと思います。

しかし、産業や科学技術の発展に伴い、暮らしが自然の中から離れてゆくにつれ、「ライフ」の中にある「生命」への意識は、次第に薄まってゆきました。
そして、いつしか「生命」は、「人生」と「暮らし」の向こう側にあるものへと変わっていったのかもしれません。

そんな「ライフ」の意味について考えを巡らせていると、ある文章がふと頭に浮かびました。
それは、かつて「画壇の仙人」とも称された画家・熊谷守一の本「へたも絵のうち」で綴られていた文章。

守一は、東京美術学校を首席で卒業後、友人の紹介で北海道・宗谷岬の北にある樺太の調査団における記録画家の仕事に携わります。
それは、今から遡ること100年以上も前の明治38年(1905年)、彼が25歳の時のことでした。

そこで守一は、古くからの伝統を守り続ける、あるアイヌ民族に出会ったのです。
彼は、アイヌの人々の生き方に強く感銘を受け、その時のことを振り返り、幾つかの文章を残しています。
その本の中で残された、ある二つの文章があります。
ひとつ目は、守一が出会ったあるアイヌの漁師のことを綴った文章。

「彼らは漁師といっても、その日一日分の自分たちと犬の食べる量がとれると、それでやめてしまいます。とった魚は砂浜に投げ出しておいて、あとはひざ小僧をかかえて一列に並んで海の方をぼんやりながめています。なにをするでもなく、みんながみんな、ただぼんやりして海の方をながめている。魚は波打ちぎわに無造作に置いたままで波にさらわれはしないかと、こちらが心配になるくらいです。」

そして、もうひとつの文章は、彼が目にしたある風景を綴った文章。

「ずいぶん年をとったアイヌが2人、小舟をこいでいる情景を見たときは、ああいい風景だなとつくづく感心しました。背中をかがめて、ゆっくりゆっくり舟をこいでいる。世の中に神様というものがいるとすれば、あんな姿をしているのだな、と思って見とれたことでした。」

守一が出会ったアイヌの人々は、まさに「生命」と「人生」と「暮らし」をひとつの「ライフ」として捉え、その根源にある「生命」を深く見つめながら生きていたました。
その文章が頭に浮かび、彼が目にした情景を想い描いていると、長年自分の中にあった、あるひとつの疑問が解けてゆくような感覚を抱きました。

その疑問とは、アイヌ民族のように古くからの伝承を受け継ぎ、自然と共に生きた人々の写真を眺める度に、いつも不思議に感じていたことでした。
なぜか、その写真の中に写された人々の中には、現代の私たちが失ってしまった、不思議な美しさが流れているような気がしていたのです。

それは、ただ姿形が美しい、造形が美しいというものではありません。
何か内面から立ち上がってくるような、存在そのものが香り立つような美しさなのです。
かつてアラスカを舞台に活動した写真家・星野道夫もまた、アラスカの原野で生涯を過ごした狩猟民族の古老夫婦を遠くから眺めた時の印象を「犯しがたい美しさを放っていた。」と語っています。

そんな独特の美しさは、どこから放たれているのだろうかと、いつも疑問に感じていました。
しかし、「ライフ」という言葉の意味、守一が描いた情景を紡いでゆくと、あるひとつの気付きに辿り着いたのです。
その美しさの源は、彼らのまなざしの中に隠されているのではないかと。

写真の中に写された彼らの目を深く見つめてゆくと、途方もないほどの膨大な何かを見つめているような印象を受けます。
それはきっと彼らが生涯を通して見つめて来た、数多の「生命」の物語なのだと思います。

大いなる生命の繋がりから人生と暮らしを頂き、その営みを終えた時、その大いなる生命の中に自らの命を返してゆく。
遥か古の時代から気の遠くなるほどの時間をかけ、繰り返されて来た営み。
そのすべての「生命」の物語が彼らのまなざしの中に宿っているような気がするのです。

そして、そのまなざしは、どこまでも澄み渡り、穏やかな優しさを湛えています。
あらゆるものを見つめ、「生命」の流れを自らの中に受け入れゆく。
彼らにとって年を重ねてゆくことは、大いなる「生命」の営みと調和してゆくことだったのかもしれません。

あらゆるものを受け入れ、包み込んでゆく先で生まれる美しさ。
それは、善と悪、美と醜、聖と俗、富と貧困、都市と自然、民族や宗教の違いなど、多くのものが対立する二つの価値観の中で終わりのない争いを続けている現代社会の中で、失われてしまった大切な価値観が宿る美しさなのだと思います。

だからこそ、その失われた美しさを取り戻すことが現代を生きる私たちにとって、かけがえのない大切な営みになるのかもしれません。
遥かなる眼差しで、人々が改めて世界を見つめた時、対立を越えた世界の繋がりを描くことが出来ると。

そのために私たちが出来ることは、「ライフ」という言葉の中にある「生命」の意味をもう一度取り戻すことなのだと思います。
しかし、時代は大きく移り変わり、私たちがかつてのような自然と共に生きる暮らしに戻ることは現実的ではありません。
だからこそ、現代の暮らしに合った新たな「ライフ」を創造する必要があるのだと思います。
科学技術の発展を経験した私たちだからこそ、育むことの出来る新たな「ライフ」を。

かつては「生命」が何よりも大きな存在でした。
それゆえに個人の存在は、時に小さなものとして扱われ、かけがえのない命を「生命」に捧げる「生贄」という考えさえも生み出しました。
それから遥かなる時を経て、科学技術の発達は、「生命」を暮らしから遠く離れた小さな存在に変えました。
そして、「人」という存在が何よりも大きなものとして扱われるようになった結果、今度は「生命」が宿るはずの地球環境が破壊されてゆくことになったのです。

そんな私たちが辿ったそれぞれの歴史に耳を澄ましてゆくと、これから描いてゆくべき新たな「ライフ」は、過去の中にも、現代社会の中にも、ないのだと思います。
そのどちらもの時代の「ライフ」を見つめ、それぞれの本質を重ね合わせた時、はじめて生まれる「ライフ」であると。

それはつまり、大いなる「生命」の営みと一人一人の「人生」、それぞれの「ライフストーリー」を深く見つめ、豊かな「暮らし」を描き出す、新たな時代を創造する「ライフ」なのだと思います。

「HAS Magazine ハス・マガジン」 がこれから歩む、新たな旅。
その旅の指針となるものは、そんな二つの「ライフストーリー」を紡いでゆくことです。

「生命」の本質を紐解く「ライフストーリー」と様々な「人生」を紐解く「ライフストーリー」。
それぞれの物語を通して、「生命」と「人生」の奥底に宿る光を見つめながら、新たな時代の「ライフ」を創造する力になりたいと考えています。

それは、それぞれの「ライフストーリー」に宿る光を紡ぐ旅とも言い換えられるかもしれません。
その二つの光が重なり合った時、新たな時代を導く光となり、未来を描く物語が紡がれてゆくのだと思います。

そして、その新たな物語を紡いでゆくのは、他でもない今この文章をお読み頂いている読者の皆様です。
それぞれの光は、一人一人の心の中で大きな輝きとなり、新たな時代を灯してゆくのだと。
だからこそ、皆様と共に旅を重ねてゆきたいと考えています。

「生命」と「人生」、それぞれの奥底に宿る光を求めて。
ひとつひとつの光がいつの日か大きな光となり、美しい世界が紡がれてゆくことを願って。

それぞれの光を辿る、新たな時代の物語を紡ぐ旅を始めてゆきます。

Reference :

  • 「へたも絵のうち」
    著者:
    熊谷 守一
    出版社:
    平凡社
  • text / photo :
    HAS Magazine
    HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。

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