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2023.4.28
[ 後編 ]

水の都・大阪の
自由の風に吹かれて

Osaka &
Wind of Liberty
Osaka & Wind of Liberty
後編
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Osaka &
Wind of Liberty
水の都・大阪。
かつて大阪は「アドリア海の女王」とも称されたイタリアが誇る水の都「ヴェネツィア」を見立て「東洋のベニス」と謳われた。

しかし、戦後の高度経済成長の中で、多くの水路は、道路へと姿を変え、かつての水の都としての記憶は、時の彼方へと忘れ去られていった。
そんな水の都の記憶を辿ってゆくと、この土地に吹く自由の風に出会った。
その風は、多様な生き方を肯定し、個性豊かな文化を生み出していた。

そんな大阪の物語を紐解きながら、大阪に吹く自由の風に耳を澄ませてゆく「水の都・大阪の自由の風に吹かれて」。

後編「曽根崎の森で」では、時を越える悲哀の物語の背景に流れる人々の想いを紐解いてゆく。
後編
曽根崎の森で
Forest
of Sonezaki
Forest
of Sonezaki

無名の文化

長い戦国時代が終わり、商業都市として大きく発展していった大阪。
その担い手となったのは、貴族でも、武士でもなく、都市に住む無名の町人たちだった。
階級社会に捉われない自由な環境の中で、彼らは多様な商売を手掛け、失敗と成功を重ねながら、自らの哲学を育んでいった。
そんな町人たちによって、あるひとつの文化が生み出される。

その文化とは「元禄文化」。
町人の暮らしを題材にした様々な作品が作られ、これまでの時代にはない多様な文化が花開いたのだ。

その文化の中心には、大阪の町で暮らしたある二人の作家がいた。
一人目は、人形を用いた演劇「人形浄瑠璃」を通して、町人の社会を舞台に作品を描いた「近松門左衛門」。
二人目は、町人の暮らしを題材に物語を紡ぐ「浮世草子」という新たな小説の形式を生んだ「井原西鶴」。

彼らは、町人たちの暮らしぶりを間近に眺め、その体験をもとに数々の作品を発表していった。
そして、彼らが生み出した作品は、大阪に暮らす人々の心を見事なまでに映し出し、町人たちの心を掴み、大阪に吹く自由の風をより大きなものに変えてゆく。

そんな彼らが辿った軌跡の中にもまた、自由の風が吹いていたのである。

無謀な決断

「人形浄瑠璃」において、後世に語り継がれる数多くの作品を残した近松門左衛門。
彼は、1653年、現在の福井県である越前国に生まれる。
本名は、杉森信盛。近松門左衛門とは、彼が作家活動を始めてからのペンネームだった。

父は福井で武士をしていたが、彼の少年期に越前国を離れ、武士を辞め浪人となる。そして、浪人となった父と共に家族は、京都へと移住。
京都に移った後に、彼は幾つかの公家に仕えるようになったという。

Reference :

  • 「大阪商人」
    著者:
    武光誠
    出版:
    ちくま新書
  • 「水都大阪物語」
    著者:
    橋爪紳也
    出版:
    藤原書店
  • 「商いの精神」
    著者:
    西岡義憲
    編集:
    大阪府「なにわ塾」
    出版監修:
    教育文化研究所
  • 「市民大学の誕生」
    著者:
    竹田健二
    出版:
    大阪大学出版会
  • 「懐徳堂の至宝」
    著者:
    湯浅邦弘
    出版:
    大阪大学出版会
  • 「日本永代蔵」
    著者:
    麻生礒次 / 富士昭雄
    出版:
    明治書院
  • 「西鶴に学ぶ 貧者の教訓・富者の知恵」
    著者:
    中嶋隆
    出版:
    創元社
  • 「上方文化講座・曽根崎心中」
    著者:
    大阪市立大学文学研究科「上方文化講座」企画委員会
    出版:
    和泉書院
  • 「石田梅岩 - 峻厳なる町人道徳家の孤影」
    著者:
    森田健司
    出版:
    かもがわ出版
  • 「AD・STUDIES vol.5 2003」
    発行:
    財団法人 吉田秀雄記念事業財団
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