京都府庁旧本館
柔らかな陰影が流れる場所
かつて茶の湯に用いる釜を鋳造していた、釜師が多く住んでいたことを由来とする釜座通りを北に抜けると、ひときわ目立つ大きな洋館「京都府庁旧本館」が建っている。
この建物は、今から遡ること100年以上も前。1904年(明治37年)に竣工。現役で実務が行われている観光庁舎としては日本最古の建築物として知られている。
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西洋建築技術の粋
建築には、当時国内に蓄積された西洋建築技術の粋を結集し、設計されたという。
事実、当時この建築物について「現在の日本の庁舎の建築として、全国第一として誇るに足るべし」とも語られたほどであった。
そのため全国からの見学者が絶えなかったとも言われている。
設計に携わったのは、松室重光という建築家であった。
その評価非常に高くは、当時の建築界の巨人の一人であった、伊東忠太(1867~1954)と並び称されるほどの評価であった。
伊藤は、「平安神宮」、「築地本願寺」などの代表作で知られる建築家である。
西洋と東洋の美の融合
西洋の建築技術を結集し、作り上げられた京都府庁舎。
そんな建築物と対をなすように、庭園は、明治・大正期の最高の庭師とも称された庭師・小川治兵衛(1860 ~ 1933)が手掛けた。
彼は、水の流れを生かした自然な景観作りを得意とし、水と石の魔術師とも謳われた庭師。
彼の手によって、庁舎の中庭には、東洋的な美しさが表現された美しい庭園が描き出されたのである。
まさにこの場所は、当時の日本における西洋建築技術の粋と日本一の庭師によって生まれた、西洋と東洋の美意識が融合した場所であった。
この場所で時の流れに耳を澄ますと、そんな様々な才能が歩んだ、それぞれの物語に出会うことが出来るのだ。
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Information :
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京都府庁旧本館
address : 京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
Reference :
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「松室重光と古社寺保存(日本建築学会計画系論文集 第613号)」
- 著者:
- 清水重敦
- 出版:
- 日本建築学会
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「桜のいのち庭のこころ」
- 著者:
- 佐野藤右衛門
- 聞き書き:
- 塩野米松
- 出版:
- ちくま文庫
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