京都・古のせせらぎを奏でて
Ancient River
Ancient River
この言葉は、平安時代のある日記に残されていた言葉。
幾度もの時代の移り変わり、数々の動乱に巻き込まれながらも、約1200年前にこの地に灯された都市の光は、決して途絶えることなく輝き続けた。
なぜこの地の光は消えることなく、永遠の命を宿すことが出来たのだろうか。
そんな京都に宿る永遠の都市の光を紐解いてゆく「京都・古のせせらぎを奏でて」。
後編の題名は「清流に導かれて」。
今回の物語では、平安京の守護神「東の厳神」を祀った、もうひとつの一族の旅の記憶を辿ってゆきたい。
- text / photo HAS
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[ 序章 ]ある日記の言葉
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[ 前編 ]永遠の都の暁
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[ 中編 ]彼方からの海風
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[ 後編 ]清流に導かれて
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[ 最終編 ]せせらぎに耳を澄まして
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帰らざる旅路
鴨に宿る記憶
様々な産業や文化、技術を通して平安京の礎を築いた「西の猛霊」を祀った一族。
彼らが辿った旅の記憶を紐解いてゆくと、そこには苦難を重ねながらも遍歴の旅を重ねた人々の物語が流れていた。
そして、彼らが紡いだ物語に、もうひとつの一族の物語が重なり合うことで、平安京は永遠の都としての命を宿してゆく。
そのもうひとつの一族とは、平安京の北東を守護する「東の厳神」を祀った人々。
彼らは、自らを「賀茂族」と言った。
遍歴の旅を重ねた「秦族」のように、彼らもまた長い旅路の果てに京都の地に辿り着いた人々だった。
彼らは、かつて大和葛城と呼ばれる土地に暮らしていた。
大和葛城とは、現在の奈良県の中西部、大阪との県境にある土地のこと。
この地には、古来から神が宿る山として多くの人々の信仰を集めて来た、金剛山と葛城山という山々が連なり、神々を祀る数々の神社が創建された。
そして、そうした神社の中に「賀茂族」の確かな足跡を今に伝える神社が残されている。
それは、「高鴨神社」、「鴨都波(かもつは)神社」、「鴨山口神社」といった「鴨」の名を持つ神社。
「賀茂族」はまた「鴨族」とも呼ばれており、それらの神社は、どれも「賀茂族」が信仰した神々を祀った神社だった。
その中のひとつ「高鴨神社」は、「賀茂族」の起源となる神を祀る神社。
この神社は、日本全国に点在する「賀茂」という名前を持つ神社の総社でもある。
それは京都を代表する古社として今も訪れる人が絶えない、「上賀茂神社」、「下鴨神社」の両神社も含まれる。
そう、「東の厳神」とは、遥か昔「賀茂族」が京都の地で創建した「上賀茂神社」に宿る神だったのだ。
そんな彼らの起源を伝える「高鴨神社」の始まりは、今から遡ること2千年以上も前の弥生時代に遡るという。
その歴史は、賀茂族がいかに長い時間をこの土地で暮らしてきたのかを教えてくれる。
だが、後に彼は馴染み深い大和葛城の地を離れ、新天地を目指す決断をするのだ。
平和への想い
その決断の背景には、彼らのあるひとつの想いがあった。
当時の奈良・葛城は、賀茂族以外にも幾つもの力を持った豪族たちが勢力を競い合っていた。
だがその争いは次第に大きくなり、やがて一族間での戦へと発展してゆく。
彼らの故郷は、いつの間にか様々な人々の血で染められゆく土地へと変わっていったのだ。
- text / photo HAS
Reference :
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「水と世界遺産 景観・環境・暮らしをめぐって」
- 編集:
- 秋道智彌
- 出版:
- 小学館
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「京の社 神々と祭り」
- 著者:
- 上田 正昭
- 出版:
- 人文書院
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「京都の歴史1 平安の隆運」
- 編集:
- 佛教大学
- 出版:
- 京都新聞社
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「祈りの回廊 特別講和「始まりの地、葛城と鴨族」 制作 : 奈良県観光局 観光プロモーション課」
- URL:
- www.inori.nara-kankou.or.jp/inori/special-interview/kowa20
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「歴史で読み解く京都の地理」
- 編集:
- 賀茂御祖神社
- 出版:
- 淡交社
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「下鴨神社と糺の森」
- 編集:
- 賀茂御祖神社
- 出版:
- 淡交社
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「謎の渡来人 秦氏」
- 著者:
- 水谷千秋
- 出版:
- 文藝春秋
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「松尾大社 神秘と伝承」
- 著者:
- 丘眞奈美
- 監修:
- 松尾大社
- 出版:
- 淡交社
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「賀茂御祖神社」
- 編集・発行:
- 賀茂御祖神社社務所
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「世界文化遺産・賀茂御祖神社 - 下鴨神社のすべて」
- 編集:
- 賀茂御祖神社
- 出版:
- 淡交社
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「秦氏とカモ氏」
- 著者:
- 中村修也
- 監修:
- 臨川選書
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text / photo :HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。About : www.has-mag.jp/about
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[ 序章 ]ある日記の言葉
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[ 前編 ]永遠の都の暁
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[ 中編 ]彼方からの海風
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[ 後編 ]清流に導かれて
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[ 最終編 ]せせらぎに耳を澄まして