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2023.11.22
[ 前編 ]

京都・古のせせらぎを奏でて

Kyoto &
Ancient River
Kyoto & Ancient River
前編
Kyoto &
Ancient River
平安の京は、いつまでも変わることのない永遠の都である。
この言葉は、平安時代のある日記に残されていた言葉。

幾度もの時代の移り変わり、数々の動乱に巻き込まれながらも、約1200年前にこの地に灯された都市の光は、決して途絶えることなく輝き続けた。

なぜこの地の光は消えることなく、永遠の命を宿すことが出来たのだろうか。
そんな京都に宿る永遠の都市の光を紐解いてゆく「京都・古のせせらぎを奏でて」。

前編の題名は「永遠の都の暁」。
今回の物語では、京都に都が誕生するまでの歴史を辿りながら、平安京のはじまりの物語を辿ってゆきたい。
前編
永遠の都の暁
Dawn in
the City
Dawn in
the City

白羽の矢

京都に残された古の人々の旅の物語。
その物語を紐解いてゆくために、まずは京都に都が誕生するまでの記憶を辿るところから、この物語を始めてゆきたい。

今から遡ること約1300年ほど前。
当時の都は奈良・平城京。
大陸からもたらされた文化が花開いた時代だった。

当時の日本文化の中心地は、都のある奈良と外国との交易の玄関口である大阪だった。
その一方で京都は、自然豊かな田園風景が広がっていた。

当時の奈良や大阪から見れば、京都は未だ辺境のひとつの地域に過ぎなかったのだ。

だがしかし、大きな転換点となる出来事が次々と起き始める。
それは政治権力を狙う様々な人々の間での争いだった。

ひとつは、国の宗教として定められていた、仏教僧たちが大きな力を持ち始めたこと。
なんと彼らの中には、僧という立場にも関わらず、政治権力を狙うものまで現れるようになっていた。

そして、もうひとつは、天皇家以外の様々な豪族も勢力を伸ばし始めていたことだった。

彼らの力は天皇と言えども無視出来ないほどに大きくなっていた。
様々な人々の権力へのあくなき欲求と謀略が渦巻く当時の政治は、次第に腐敗しつつあったという。

そんな状況を憂いた当時の天皇・桓武天皇は、ある決意をする。
それは、奈良・平城京を離れ、新たな都を打ち立てるという決意。

そこには、腐敗した仏教勢力や力を付けた豪族たちを政治から遠ざけ、政治環境を一新するという強い決意が込められていた。

そして、新たな都の候補地を探す中で、白羽の矢が立ったのが豊かな自然に恵まれた京都盆地だったのだ。

幻の都

桓武天皇の新たな決意のもと、ついに京都に都が誕生する。
その都の名前は、長岡京。

長岡京が置かれたのは、現在の京都市の西側一帯に広がる地域。
そこは、古くから田園風景が広がる土地だった。

そんな土地が突如として都へと大きく姿を変えたのだ。
だが、この都は長く続くことはなかった。

長岡京の遷都後、様々な不幸な事件が頻発する。
暗殺事件や天災、工事の難航などが続き、不穏な空気が都を包んでいったのだ。

あまりにも頻発する不幸から、人々は怨霊の祟りによるものだとして恐れたという。
そして、最終的には、遷都を主導した桓武天皇は、長岡京の廃都を決める。

それは奈良からの遷都から、わずか10年の年月だった。
後に「幻の都」とも称される長岡京は、儚くも時の彼方へと消えていったのだ。

しかし、桓武天皇は新たに見出した京都盆地から離れることはなかった。
長岡京からさらに東へと広がる土地に、新たな都市の光を見出していたのだ。

平安の京

新たな都の場所を定めた桓武天皇は、次のような文章を発表する。

「この地は山や川が麗しく、人々が行き交うのに交通や水運の便が良い。山と川は、まるで襟と帯のように美しいのだ。また自然に守られた要塞のような土地でもある。この素晴らしい土地にちなみ、新たな国号を制定すべきだ。この地を褒め称える人々が口を揃えて『平安の京』と呼ぶ。よってこの都の名前を平安京とする。 」
(延暦13年11月8日条・意訳)

この宣言が出されたのが794年。
京都盆地は、この宣言と共に「平安京」という名を与えられ、新たな都として命を宿したのだ。

平安京は、長岡京での失敗を教訓に、より慎重な都の造営がなされた。
不運が重なった10年の歳月も、振り返れば、より良い都を作るための思索を深める、得難い機会となったのかもしれない。

実際に平安京では、計画的な都市設計に加えて、風水や宗教をより深く取り込み、精神的な深みを都市に重ねていったのだ。

風水では、最高の吉相地である「四神相応」を持つ地域を見定め、その場所を中心に都を築いた。

また宗教的な観点では、都の守護を司る神々を各所に祀ることで、都に結界を張り巡らせ、災いを平安京から遠ざけようとしたのだ。

遥かなる旅路へ

こうした取り組みが功を奏したのか、平安京は未だかつてないほど長く続く都となっていった。

そして、平安京が生まれ、400年の時が過ぎた平安時代末期。
ある公家の日記の中に、当時の都への想いを記した言葉が残されている。

「平安の京は、いつまでも変わることのない永遠の都である。東に厳神(げんしん)あり、西に猛霊(もうれい)を仰ぐ。この二神の守護によって、永久の平安を約束するだろう。それゆえに、この地から永久に遷都してはならない。」
(吉田経房の日記「吉記」より意訳)

これは、この物語の序章で紹介した日記の続きとなる文章。
そこには、京都を永遠の都へと導く、ある存在について書かれている。

それは「東の厳神」と「西の猛霊」という二柱の守護神。
それぞれの神は、平安京のはじまりと共に、この地の守護を託された神々だった。

人々は、その神々こそが様々な災いから平安京を守ると信じていた。
だからこそ、決して滅びることなく永遠の都となるのだと。

そして、その二柱の守護神は、平安京が誕生する以前に、この地に既に辿り着いていた人々が祀った神々だった。

「西の猛霊」は、京都の西を流れる桂川流域を拠点に暮らした一族が祀っていた。
もう一柱の「東の厳神」は、京都の北東から流れる賀茂川上流を拠点に暮らした一族が祀っていたのだ。

平安京は、桓武天皇の意志のもと、突如として京都盆地に誕生したわけではなかったのだ。

彼らは信仰だけでなく、平安京が誕生する以前に、京都盆地に様々な産業や文化、技術をもたらしていた。
彼らが築いた礎があったからこそ、平安京は都として歩み始めることが出来たのだ。

それは、彼らの存在なくして平安京は誕生しなかった、とも言い換えられるかもしれない。
そんな彼らの功績を讃え、それぞれの一族が信仰する神は、都の守護神として祀られていったのだ。

彼らはなぜ、そんな様々なものを京都の地にもたらすことが出来たのか。
その答えは、かつて彼らが辿った遥かなる旅路の中に隠されていたのだ。

そう、彼らが辿った旅の物語の中にこそ、京都を永遠の都へと導く遥かなる光の記憶が流れていたのだ。

そんな永遠の光の記憶を紐解いてゆくために、それぞれの一族が辿った旅の物語に耳を澄ませてゆきたい。

Reference :

  • 「水と世界遺産 景観・環境・暮らしをめぐって」
    編集:
    秋道智彌
    出版:
    小学館
  • 「京の社 神々と祭り」
    著者:
    上田 正昭
    出版:
    人文書院
  • 「京都の歴史1 平安の隆運」
    編集:
    佛教大学
    出版:
    京都新聞社
  • 「祈りの回廊 特別講和「始まりの地、葛城と鴨族」 制作 : 奈良県観光局 観光プロモーション課」
    URL:
    www.inori.nara-kankou.or.jp/inori/special-interview/kowa20
  • 「歴史で読み解く京都の地理」
    編集:
    賀茂御祖神社
    出版:
    淡交社
  • 「下鴨神社と糺の森」
    編集:
    賀茂御祖神社
    出版:
    淡交社
  • 「謎の渡来人 秦氏」
    著者:
    水谷千秋
    出版:
    文藝春秋
  • 「松尾大社 神秘と伝承」
    著者:
    丘眞奈美
    監修:
    松尾大社
    出版:
    淡交社
  • 「賀茂御祖神社」
    編集・発行:
    賀茂御祖神社社務所
  • 「世界文化遺産・賀茂御祖神社 - 下鴨神社のすべて」
    編集:
    賀茂御祖神社
    出版:
    淡交社
  • 「秦氏とカモ氏」
    著者:
    中村修也
    監修:
    臨川選書
  • text / photo :
    HAS Magazine
    HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。
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