奈良・春日野と
聖なる森の月夜
聖なる森の月夜
in Nara
in Nara
この都市には、遥か古の時代から大切に守り継がれて来た森がある。
その森の名は「春日山原始林」。
太古の自然を今に残す貴重な森として、世界遺産にも登録されている森だ。
奈良・春日大社の後方に佇む、御蓋山の中にあるこの森は、神が宿る聖なる森として1100年以上もの昔から特別な祭祀を除き、人々の入山が禁止されて来た。
そんな遥かなる時を宿す、聖なる森の記憶を辿ってゆくと、あるひとつの記憶に辿り着いた。
それは、かつて古の人々が紡いだ人と自然の共生の記憶。
その記憶は、様々な環境問題に直面する、今の地球に生きる全ての人々にとって指針になりうる大いなる記憶であったのだ。
そんな遥かなる時を宿す、古の森の記憶を辿ってゆく、「奈良・春日野と聖なる森の月夜」。
最終編の題名は「世界を繋ぐ森の記憶」。
今回の物語では、世界各地の人々の古の森の記憶を辿りながら、これからの未来を描く手掛かりを探ってゆきたい。
- text / photo HAS
-
[ 序章 ]彼方の月夜を眺めて
-
[ 前編 ]聖なる森の記憶
-
[ 中編 ]煌びやかな文明の影
-
[ 後編 ]無窮に繋がる生命
-
[ 最終編 ]世界を繋ぐ森の記憶
the World
the World
世界の森の記憶
古のヨーロッパへ
深い森の中で育まれた、縄文の人々の「森の思想」。
その思想は、「照葉樹林の森」を通して、遥か海を越え、東アジアの人々の共通の記憶であったことが明らかになった。
そして、その「森の思想」が東アジアだけでなく、世界を繋ぐ思想となりうることを世界各地の森と人々の古の記憶を辿りながら紐解いてゆきたい。
今頭の中に広がる世界地図をヨーロッパへと目を移してもらいたい。
そこは、現代の科学技術文明の母体となった西洋文明が生まれた地域。
その西洋文明の「自然観」の根底には、「神から人、人から自然」という、人と自然との縦の関係性が流れていることは、既に明らかにした通りである。
だがしかし、その「自然観」は決して、遥か古の時代から連綿と続いて来たものではないのだ。
西洋文明の起源の地、ギリシアは、今では草木の生えない山々が広がっているが、かつては松や柏の木々が生い茂る森林が残っていたという。
その当時の言葉を調査した「グリム童話」を編纂したことで知られる「グリム兄弟」は、当時使われていた「神殿」という言葉を表す古い言葉には、最古の聖所が自然の「森林」であったという意味が込められていることを明らかにした。
グリム兄弟は、文学者であるとともに、言語学者・民話の収集家でもあった。
- text / photo HAS
Reference :
-
「日本という国―歴史と人間の再発見」
- 編集:
- 梅原猛
- 編集:
- 上田正昭
- 出版:
- 大和書房
-
「森の日本文化 - 縄文から未来へ」
- 著者:
- 安田喜憲
- 出版:
- 新思索社
-
「鎮守の森 - 社叢学への招待」
- 著者:
- 上田正昭
- 出版:
- 平凡社
-
「照葉樹林文化 - 日本文化の深層」
- 編集:
- 上山 春平
- 出版:
- 中央公論新社
-
「照葉樹林文化論の現代的展開」
- 著者/編集:
- 金子 務
- 著者/編集:
- 山口 裕文
-
「世界遺産 春日山原始林 -照葉樹林とシカをめぐる生態と文化-」
- 編集:
- 前迫ゆり
- 出版:
- ナカニシヤ出版
-
「鎮守の森の物語 - もうひとつの都市の緑」
- 著者:
- 上田 篤
-
「照葉樹林文化の成立と現在」
- 著者:
- 田畑 久夫
- 出版:
- 古今書院
-
「神道千年のいのり 春日大社の心」
- 著者:
- 花山院弘匡
- 出版:
- 春秋社
-
「宮司が語る御由緒三十話 - 春日大社のすべて」
- 著者:
- 花山院弘匡
- 出版:
- 中央公論新社
-
「長い旅の途上」
- 著者:
- 星野道夫
- 出版:
- 文藝春秋
-
text / photo :HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。About : www.has-mag.jp/about
-
[ 序章 ]彼方の月夜を眺めて
-
[ 前編 ]聖なる森の記憶
-
[ 中編 ]煌びやかな文明の影
-
[ 後編 ]無窮に繋がる生命
-
[ 最終編 ]世界を繋ぐ森の記憶