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2022.11.27

天上に続く風景を紡ぐ
大内峠一字観公園 Ouchi Pass Ichijikan Park

海の京都とも言われる京都府北部、丹後半島の宮津湾にある「天橋立」。
数千年もの時をかけ育まれた、弧を描くように伸びる砂州と生い茂る松林が独自の美しい景観を描き出す「天橋立」は、宮城の「松島」・広島の「宮島」とともに、日本三景の一つとして数えられる。

その丹後半島の根元に位置する、この「大内峠一字観公園」では、そんな美しい自然が織り成す風景を静かに味わうことが出来る。
この地から望む天橋立は、まるで天まで続く橋のように松並木が横一文字に見えることから、一字観公園と名付けられた。
その美しい風景は、古の時代から数多くの人々を惹きつけ、様々な歌人がこの地を訪れたという。

そして、昭和5年5月のある日、一人の歌人がこの地を訪れた。
その歌人の名は、与謝野晶子。
「情熱の歌人」とも言われ、燃えるような恋の想いを歌った「みだれ髪」。
そして、反戦の想いを綴った「君死にたまふことなかれ」といった代表作を残しながら、女性の社会的地位の向上を目指し、自由に生きる女性の代表として生きた歌人・与謝野晶子。

夫の鉄幹と共にこの地を訪れた与謝野晶子は、ひとつの歌をこの地に残している。

「海山の 青きが中に 螺鈿(らでん)おく 峠の裾の 岩瀧の町 」

空の青さに海も山も溶け込み、景色が青一色となる黄昏どきに、この場所から町を見下ろすと、岩滝の町並みがまるで螺鈿細工のように輝きながら、海と山の青と美しく響き合っている、と。

この地の美しい風景に心を打たれ、その風景を想い、紡がれた歌である。
螺鈿(らでん)細工とは、アワビなどの貝がらの輝いた部分を薄くし、木地や漆地に貼り付け、美しい輝きを装飾する技法のこと。
その起源は明らかではないが、紀元前3500年の古代エジプトの装身具にその装飾が残っていると言われ、日本には1300年ほど前に中国大陸から伝えられた。
その技法は正倉院の宝物にも使われ、遥か昔から人々の暮らしを美しく彩って来た。

与謝野晶子がこの地の美しさと重ね合わせた、その「螺鈿」という言葉が表すように、数千年もの時が育んだこの場所の風景には、時を越え変わることなく人々の心と響き合う美しさが、今もなお流れ続けている。

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