水の都・大阪の
自由の風に吹かれて
自由の風に吹かれて
Wind of Liberty
Wind of Liberty
かつて大阪は「アドリア海の女王」とも称されたイタリアが誇る水の都「ヴェネツィア」を見立て「東洋のベニス」と謳われた。
しかし、戦後の高度経済成長の中で、多くの水路は、道路へと姿を変え、かつての水の都としての記憶は、時の彼方へと忘れ去られていった。
そんな水の都の記憶を辿ってゆくと、この土地に吹く自由の風に出会った。
その風は、多様な生き方を肯定し、個性豊かな文化を生み出していた。
そんな大阪の物語を紐解きながら、大阪に吹く自由の風に耳を澄ませてゆく「水の都・大阪の自由の風に吹かれて」。
最終編「風のささやき」では、大阪に吹く自由の風の根底にある美学を紐解いてゆく。
- text / photo HAS
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[ 序章 ]自由の風の調べ -
[ 前編 ]儚き夢と共に -
[ 中編 ]自由の哲学 -
[ 後編 ]曽根崎の森で -
[ 最終編 ]風のささやき
of the Wind
of the Wind

破天荒な男
階級社会に捉われない自由な風土の中で、町人の暮らしを題材にした様々な作品が生み出された「元禄文化」。
その文化の中心を担ったもう一人の作家の名前は、井原西鶴。
彼は、町人の暮らしを題材にした「浮世草子」と言う小説のジャンルを生み出した。
彼が生まれたのは、1642年頃。
だがその生涯については、未だ不明なことが多い。
出身地はおろか、本名の真偽も謎に包まれているのだ。
そのため彼の両親についても、ほとんど何も分かっていない。
ただ彼の代表作のひとつ「好色一代男」の作中で垣間見える教養の高さから大阪の裕福な商人の子だったのではないかとも語られている。
彼もまた近松門左衛門と同様、安定的な立場を捨て、不安定な芸能の世界に身を置いたのだろうか。

「好色一代男」とは、西鶴のデビュー作となった小説。
この作品は、ある大金持ちの父親と芸者の母親の間に生まれた架空の主人公「世之介」の一生を描いた小説である。
西鶴は、この作品を通して、日本で初めて町人の暮らしを舞台にした小説を発表した。
7歳にして恋を知り、あらん限りの恋愛経験を経て、60歳に至り女性だけが住むと言われる架空の島「女護ヶ島」に出航し、最後は消息不明になる。
笑ってしまうほど愚直なまでに恋に生き、最後の最後まで女性を追い求めた男のウィットに富んだ物語。
その生涯で関係を持った女性は、なんと3000人以上という破天荒な生き様を描いた作品であった。

オランダ流人生
そんな「好色一代男」を発表したのは、西鶴が40歳の時。
それまで彼は、俳諧師として生活をしていた。
15歳にして俳句を始め、20代半ばにして俳句を人に指導する立場である「宗匠」となる。
- text / photo HAS
Reference :
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「大阪商人」
- 著者:
- 武光誠
- 出版:
- ちくま新書
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「水都大阪物語」
- 著者:
- 橋爪紳也
- 出版:
- 藤原書店
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「商いの精神」
- 著者:
- 西岡義憲
- 編集:
- 大阪府「なにわ塾」
- 出版監修:
- 教育文化研究所
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「市民大学の誕生」
- 著者:
- 竹田健二
- 出版:
- 大阪大学出版会
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「懐徳堂の至宝」
- 著者:
- 湯浅邦弘
- 出版:
- 大阪大学出版会
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「日本永代蔵」
- 著者:
- 麻生礒次 / 富士昭雄
- 出版:
- 明治書院
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「西鶴に学ぶ 貧者の教訓・富者の知恵」
- 著者:
- 中嶋隆
- 出版:
- 創元社
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「上方文化講座・曽根崎心中」
- 著者:
- 大阪市立大学文学研究科「上方文化講座」企画委員会
- 出版:
- 和泉書院
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「石田梅岩 - 峻厳なる町人道徳家の孤影」
- 著者:
- 森田健司
- 出版:
- かもがわ出版
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「AD・STUDIES vol.5 2003」
- 発行:
- 財団法人 吉田秀雄記念事業財団
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text / photo :HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら世界中の美しい物語を紡ぐライフストーリーマガジン。 ひとつひとつの物語を通して、様々な人々の暮らしを灯してゆくことを目指しています。About : www.has-mag.jp/about
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[ 序章 ]自由の風の調べ -
[ 前編 ]儚き夢と共に -
[ 中編 ]自由の哲学 -
[ 後編 ]曽根崎の森で -
[ 最終編 ]風のささやき