HAS Magazine
HAS Magazine
HAS Magazine
search
account
Share the Article
或る風に寄せて
立原道造
『暁と夕の詩』より

おまへのことでいっぱいだった 西風よ
たるんだ唄のうたいやまない 雨の昼に
とざした窓のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら

おぼえてゐた おののきも 震えも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかってゐる

おまへのうたった とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだろう 誰が
それを忘れるのだろう……そうして

夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来る うすやみのなかに
おまへは 西風よ
みんななくしてしまった と

Artist
立原道造
立原 道造(たちはら みちぞう / 1914 - 1939年 )は、東京都中央区出身の詩人であり、建築家としての足跡も残した。
若干13歳にして自選の歌集や詩集をまとめ、第一高等学校在学中から堀辰雄と室生犀星に師事。
その後、東京帝国大学工学部建築学科に入学。同学部の1学年下には、丹下健三が在籍していた。
建築の分野でも際立った才能を発揮し、在学中に辰野金吾賞を3回受賞するなど将来を嘱望された。
さらに、詩の分野でも『萱草に寄す』と『曉と夕の詩』を立て続けに出版し、第1回中原中也賞を受賞するも結核を患い24歳という若さで帰らぬ人となる。
Refference
暁と夕の詩
  • 著者 立原道造
  • 出版 青空文庫
Share the Article
片町に更紗染めるや春の風
与謝蕪村
『郷愁の詩人 与謝蕪村』より
More Info
Artist
与謝蕪村
与謝 蕪村(よさ ぶそん / 1716 - 1784年)は、江戸時代中期の日本の俳人・文人画家。
現在の大阪郊外、淀川に近い村で生まれ、20歳前に江戸へ出ると、巴人(はじん)という俳人に師事して俳句を学び始める。
28歳の頃、俳号として「蕪村」を名乗り始め、松尾芭蕉への憧れから10年に近い放浪生活を重ね、42歳のときに京都へ定住した。
絵と俳句の両面で独自の世界観を描き出し、近代の俳人や詩人たちにも大きな影響を与えた。
Refference
郷愁の詩人 与謝蕪村
  • 編集 萩原朔太郎
  • 著作 与謝蕪村
  • 出版 青空文庫
Share the Article
茶っぽく青い樫の梢から見える、高あく澄んだ青空をながめると、変なほど雲がない。
宮本 百合子
『秋風』より
More Info
Artist
宮本 百合子
宮本 百合子(みやもと ゆりこ / 1899 - 1951年)は、東京・文京区出身の小作家・思想家。
若干18歳で『貧しき人々の群』で文壇に鮮烈にデビューし、天才少女と注目された。
女性の自立を追求した作品「伸子」を発表した後、1928年新しい発展をもとめてソ連、ヨーロッパで生活。
その後ソ連を訪れ日本共産党に入党。宮本顕治と結婚。再三検挙されながらも執筆活動を続けた。戦後は民主主義文学運動の出発を宣言。
日本の左翼文学・民主主義文学、さらには日本の近代女流文学を代表する作家の一人である。
Refference
秋風
  • 著者 宮本百合子
  • 出版 青空文庫
Share the Article
Vendredi
Tamas Wells
安息の地へと誘う優しい歌を
More Info
安息の地へと誘う優しい歌を

吹き抜ける風、やわらかな木漏れ日、穏やかな川のせせらぎ。 美しい自然が訪れる人をそっと包み込むような場所。 この音楽には、まるでそんな安息の地へと誘うような優しい歌声が流れています。

「A Plea En Vendredi」というアルバムの中に収められた一曲。 この曲は、オーストラリア出身の学者であり、シンガーソングライターのタマズ・ウェルズによって紡がれました。

聴く人の心を優しく包み込むような彼の歌は、安らぎの地の穏やかな木漏れ日のように、あたたかな時間を私たちに届けてくれます。

Artist
Tamas Wells
オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、タマズ・ウェルズ。
彼は、2006年から2012年の6年間をミャンマーで過ごし、現地のNGOでHIV/エイズ教育のヘルスワーカーやフィールドワーカーの仕事をしていた。
その後メルボルンに戻り、メルボルン大学でビルマ政治学の博士号を取得し、現在は学者として暮らしている。
そんな彼の奏でる歌声は、澄み切った優しさに包まれ、「天使の歌声」とも称される。
異色の経歴を持つシンガーソングライターである。
Refference
Vendredi
  • ArtistTamas Wells
  • AlbumTamas Wells
Share the Article
Haru Spring
Harold Budd
響き渡る水の音のように
More Info
響き渡る水の音のように

滴り落ちる水が反響し、美しい水音となって響き渡る。
この音楽は、まるで日本庭園の中にある水琴窟が奏でる音色のように、捉えどころのない自由な響きを紡ぐピアノ曲です。

「In The Mist」という名のアルバムに収められた一曲。
この曲は、アメリカの作曲家であり、ピアニストのハロルド・バッドによって紡がれました。

ささやくように揺らぐピアノの音色が穏やかな静寂を暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Harold Budd
ハロルド・バッド (1936年5月24日 - 2020年12月8日)は、アメリカ合衆国の作曲家であり、ピアニスト。
カリフォルニア大学ノースリッジ校で学士号を取得するもミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じ、一時作曲活動を休止。
その後、ブライアン・イーノのプロデュースのもと、再デビュー・アルバムをリリース。
「作曲とは無駄なものを取り除いていくこと」という理念をもとに、ラディカル・シンプリシティをテーマに独自のアンビエント・ミュージックのスタイルを追究した。
Refference
Haru Spring
  • ArtistHarold Budd
  • AlbumHarold Budd
Share the Article
The Water is Wide
Pete Seeger
名もなき人々の物語が宿る歌
More Info
名もなき人々の物語が宿る歌

アメリカ・ニューヨーク生まれの伝説的なフォークシンガー、ピート・シーガーが残したアルバム『Pete』に収められた一曲。

この『The Water is Wide(広い河の岸辺)』という曲は、作者不詳の民謡として知られ、その起源はスコットランドにあると伝えられています。

その後、イギリスからアメリカに移住した移民によってアメリカに伝えられ、フォーク・リヴァイヴァリストとしてウディ・ガスリーと共に数々の民謡を収集していた、ピート・シーガーの手によって現代のフォークソングとして新たな命を吹き込まれ、多くのアメリカ人に知られてゆくことになりました。

ピート・シーガーは生前、あくまで自分自身はフォークソングを歌うシンガーの一人であって、真のフォーク・シンガーは民衆であると語っていました。
彼が奏でるギターに合わせ、多くの人々が主役となり合唱するこの曲は、まさにそんな彼の哲学を表現している一曲とも言えるかもしれません。

多くの人々が共に歌うことで、はじめて顕れる音楽の美しさ。
この曲は、かつて当たり前のように暮らしの中に音楽があり、誰もが歌い手であった、そんな古の人々の暮らしを思い起こさせてくれる一曲です。
歌い継がれる民謡の中に確かに息づく、かつての人々の暮らしに想いを馳せながら、耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

Artist
Pete Seeger
1919年から2014年までアメリカを拠点に活動した、アメリカ・ニューヨーク生まれのフォークシンガー、ピート・シーガー(Pete Seeger)。
ハーバード大学中退後に本格的な音楽活動を始め、黒人差別への抗議や反戦などの政治的な抗議メッセージを込めたプロテスト・フォークの旗手として注目を集める。
またアメリカ各地に残された民謡を収集するためアメリカ全土を放浪するなど、フォーク・リヴァイヴァリストとしての一面を持つ。
アメリカの現代フォークを代表する伝説的なフォークシンガーとして語り継がれ、フォークの神様とも称される音楽家ボブ・ディランにも多大な影響を与えた。
Refference
The Water is Wide
  • ArtistPete Seeger
  • AlbumPete Seeger
Share the Article
The Sea & the Rhythm
Iron & Wine
懐かしい友と巡り会うように
More Info
懐かしい友と巡り会うように

ふと昔懐かしい友を想い出す時。 心の片隅に残された、かつての記憶が穏やかに灯されてゆきます。 この音楽は、そんな懐かしい友と巡り会う時間を思いおこしてくれる一曲です。

「The Sea & the Rhythm」という曲名と同じ、アルバムに収録された一曲。 この曲は、アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター Iron & Wine アイアン・アンド・ワインによって紡がれました。

歩み続ける日々から少し立ち止まり、過ぎ去りし時を想う時間。 そんな穏やかな郷愁に寄り添う美しい音楽です。

Artist
Iron & Wine
アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター、サム・ビームことアイアン・アンド・ワイン。
その名前は、自身が映画を撮影している際に、偶然雑貨店で見つけたサプリメント「Beef Iron & Wine」から名付けたという。
どこか懐かしい穏やかな歌声を特徴とする音楽家である。
Refference
The Sea & the Rhythm
  • ArtistIron & Wine
  • AlbumIron & Wine
Share the Article
Will I Know
Sea Oleena
透明な光をすくうように
More Info
透明な光をすくうように

澄み切った水面に零れ落ちる光。
この曲は、そんな自然が描く束の間のひと時をすくい上げるように紡がれた楽曲です。

この曲は、カナダ・サスカチュワン州出身の女性アーティストCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニット、Sea Oleena (シー・オリーナ)によって紡がれました。

彼女が生まれたカナダ・サスカチュワン州は、広大な草原と十万を数える湖と川が流れ、果てしなく広がる青い空に包まれた雄大な自然が息づく土地。
まるで美しい自然のひと時を紡ぐような彼女の音楽は、そんな彼女の心の中に流れる心象風景を描いたものなのかもしれません。

Artist
Sea Oleena
カナダ・モントリオール在住の女性アーティスト、ヴォーカリスト/多楽器奏者のCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニットSea Oleena (シー・オリーナ)。

子供時代にピアノ教室に通うも馴染まず、独学で作曲を始める。その後、偶然実家の空き部屋のベッドの下に、古いアコースティックを見つけたことがきっかけとなり、最初のセルフアルバムを完成する。
Refference
Will I Know
  • ArtistSea Oleena
  • AlbumSea Oleena
Share the Article
ウィリアム・ブレイク
『無垢と経験のうた』より

日が西に沈んでいく、
宵の明星が輝いている、
鳥は巣に戻って鳴きやみ、
私は自分の巣を探さなければならない。

花のような月は、
静かな光に包まれて、
天上高い四阿に座り、
夜にほほえみかけている。

さようなら、群れなす羊を楽しませていた
緑の野、しあわせな茂みよ。
小羊たちが草を食んでいた野山を
光の天使たちは静かに進む。

天使たちは目に見えぬかたちで
ひとつひとつの花と芽に
眠っているものの胸に
やすみなく祝福と歓びを注ぐ。

鳥たちを暖かくつつむ
無防備な巣をのぞき、
獣たちの住む洞穴をもれなく訪れる。
それらのものが傷つかぬように。

眠ることができなくて
泣いているものがあれば、
そのまぶたに眠りを注ぎこみ、
寝床のかたわらに座って見守る。

狼や虎が獲物をもとめて吠えるときには
憐れみのあまり立ち止まり泣く。
彼らの渇きをいやす道を探し求め
羊に手を出さないように導く。

しかし彼らが激しく猛り狂うときには
思慮深き者、天使たちは
従順な魂をひとつひとつ受け取り、
新しい世に送り出す。

そこでは、獅子たちの赤く燃える目も
黄金の涙を流す。
弱いものを憐れんで吠え、
羊たちの群のなかを歩きまわって言う。

怒りは彼のおだやかさによって
病は彼の健やかさによって
この不死の世界から
追い払われた

そして穏やかに鳴く羊よ、
これからはお前のかたわらに横たわり、
お前の名で呼ばれる方のことを思い、
お前を見守って泣く。

命の川で洗い清められた
私のたてがみは、
永遠に黄金のように光り輝く。
お前たちを守り続ける限り。

read more
More Info
Artist
ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク(1757-1827年)はイギリスの詩人・画家・版画家。
ブレイクは、ビジョンと呼ばれる幻視体験に基づいた特異な見解から同時代の人々からは狂人扱いされており、生前は詩人としては認められることはなく、一介の彫版師として生活した。
その後の批評家や読者からは、その表現力と創造性、そして作品内の哲学的・神秘主 義的な底流が高く評価されるようになり、ワーズ・ワース、コール・リッジらとともにイギリス・ロマン派の詩人の重要人物として知られている。
Refference
無垢と経験のうた
  • 著者 ウィリアム・ブレイク
  • 出版 青空文庫
Share the Article
The Moon Is a Harsh Mistress
Radka Toneff
澄み切った月の光のように
More Info
澄み切った月の光のように

月の光に照らし出された夜のひと時。 淡い月の光が描く、どこか神秘的な世界。 この音楽は、そんな美しい月の光に寄り添うような一曲です。

「Fairytales」と名付けられたアルバムに収録された一曲。 この曲は、わずか30歳の若さでこの世を去ったノルウェー出身のジャズ・シンガー Radoka Toneff ラドカ・トネフによって紡がれました。

柔らかな月の光が辺りを包み、幻想的な時間が流れ出すように、神秘的で穏やかな美しさを暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Radka Toneff
ラドカ・トネフ(1952年6月25日-1982年10月21日)は、ノルウェー出身のジャズ・シンガー。
わずか3枚のアルバムを残し、30歳の若さでこの世を去る。哀しくも彼女にとって最後のアルバムとなった『Fairytales』は、発売後10万枚以上の売上を記録し、ノルウェーのジャズ・アルバムで最も売れた作品となる。
名実ともにノルウェーのジャズシーンを代表する伝説的なシンガーの一人である。
Refference
The Moon Is a Harsh Mistress
  • ArtistRadka Toneff
  • AlbumRadka Toneff
Share the Article
銀色に縁取られた雲間から幾条かの光の足が、塔の真上に放たれる。
東山魁夷
『追憶の古都』より
More Info
Artist
東山魁夷
東山 魁夷(ひがしやま かいい / 1908年 - 1999年)は、日本を代表する風景画家の一人。
内省的な深い青色によって描かれる数々の作品には、独自の静謐な世界観が流れている。日本のみならず欧州の様々な土地を訪れ、その経験を通して自らの感性を磨いていった遍歴の画家である。
Refference
追憶の古都
  • 著者 東山魁夷
  • 出版 ビジョン企画出版社
Share the Article
  • リンクをコピー
filter
share