ウィーンの鬼才画家
エゴン・シーレの物語
エゴン・シーレの物語
Story
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彼の描いた時に異様さを伴うような、躍動的で美しい作品の数々は、今もなお多くの人々の心を捉え続けている。
そんな彼が描いた様々な作品の裏側に隠された、一人の画家の人生の物語を辿ってゆく、「ウィーンの鬼才画家 エゴン・シーレの物語」。
後編の題名は、「儚い光の先に」。
今回の物語では、様々な経験を経て、シーレが手にしたひとつの光と、その光の先に流れる物語を辿ってゆく。
- text HAS
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[ 序章 ]ウィーンの鬼才画家 エゴン・シーレの物語
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[ 前編 ]新しい芸術家への道
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[ 後編 ]儚い光の先に
Light
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ノイレングバッハ事件と投獄
ウィーンからノイレングバッハへの移住の時期と重なり合うように、シーレの被写体への興味は、大人のモデルから子供のモデルへと移り変わっていった。
それは、「永遠なる子供」と表現していた自分自身と向き合う中で生まれた、必然的な変化だったのかもしれない。
実際にシーレは、移住先で出会った子供たちをモデルにして、様々な絵を描いていった。
描かれる子供たちも、未知の世界から来た見聞ある大人に憧れを抱き、シーレが払えるだけのわずかな報酬にも喜んで応じ、子供たち自身も進んでモデルとなったという。
その光景は、決して後ろめたいものではなく、ほほえましく、無邪気なものであった。だが都会であるウィーンとは異なり、当時まだまだ閉鎖的であった田舎では、クルマウの時と同様に、その光景は受け入れ難いものであった。
事実、周囲のシーレに向けられる目は、非常に厳しいものであったという。
そんな中、一つの大きな事件が起きる。
後に、ノイレングバッハ事件と言われる事件である。
当時、村に住む退役海軍将校の娘タナチアという少女がシーレに熱烈な憧れを募らせ、シーレに一方的に付きまとっていた。
そして、事件のきっかけとなる、1912年の春のある日。
タナチアは、突如として父親に家出をつげ、シーレと当時のパートナーがいた、村から遠く離れたアトリエに押しかけたのだ。
突然現れた少女に対し、追い返すことも出来ず、困り果てた二人は、仕方なく近くのホテルで三人で宿まり、翌日にタナチアを連れて、ノイレングバッハに引き返すことに。
- text HAS
Reference :
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「エゴン・シーレ 傷を負ったナルシス」
- 著者:
- ジャン=ルイ・ガイユマン
- 監修:
- 千足伸行
- 翻訳:
- 遠藤ゆかり
- 出版:
- 創元社
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「エゴン・シーレ ドローイング 水彩画集」
- 著者:
- ジェーン・カリアー
- 翻訳・編集:
- 和田京子
- 出版:
- 新潮社
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text :HAS Magazineは、旅と出会いを重ねながら、それぞれの光に出会う、ライフストーリーマガジン。 世界中の美しい物語を届けてゆくことで、一人一人の旅路を灯してゆくことを目指し、始まりました。About : www.has-mag.jp/about
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[ 序章 ]ウィーンの鬼才画家 エゴン・シーレの物語
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[ 前編 ]新しい芸術家への道
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[ 後編 ]儚い光の先に