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水の辺りに零れる
響ない真昼の樹魂。
物のおもひの降り注ぐ
はてしなさ。
充ちて消えゆく
もだしの応へ。
水のほとりに生もなく死もなく、
声ない歌、
書かれぬ詩、
いづれか美しからぬ自らがあらう?
たまたま過ぎる人の姿、獣のかげ、
それは皆遠くへ行くのだ。
色、
香、
光り、
永遠に続く中。
1917(大正6)年、犬吠岬にて溺れた友人の今井白楊を助けようとし海に入るが、そのまま帰らぬ人となってしまう。享年27歳。あまりに早い最期だった。
- 著者 三富朽葉
- 出版 青空文庫
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沖の汐風吹きあれて
白波いたくほゆるとき、
夕月波にしづむとき、
黒暗よもを襲ふとき、
空のあなたにわが舟を
導く星の光あり。
ながき我世の夢さめて
むくろの土に返るとき、
心のなやみ終るとき、
罪のほだしの解くるとき、
墓のあなたに我魂を
導びく神の御聲あり。
嘆き、わづらひ、くるしみの
海にいのちの舟うけて
夢にも泣くか塵の子よ、
浮世の波の仇騷ぎ
雨風いかにあらぶとも
忍べ、とこよの花にほふ
港入江の春告げて、
流るゝ川に言葉あり、
燃ゆる焔に思想あり、
空行く雲に啓示あり、
夜半の嵐に諫誡あり、
人の心に希望あり。
本名は、土井 林吉(つちい りんきち)。
裕福な商家に生まれ、幼少期より学問への強い興味を持っていたが、商人に学問は不要と祖父の強い反対を受け、当初は学問の道を諦め、家業を継ぐために働き始める。だが学問への想いは消えず、仕事の合間を縫い、独り学び続けた。
その熱意にほだされ、最終的に祖父も進学の道を認め、本格的に学問への道に進む。
その後、東京帝国大学英文科に進み、学業の傍らで様々な詩を発表する。
男性的な漢詩調の詩風で、女性的な詩風の島崎藤村と並んで「藤晩時代」と称された。
瀧廉太郎の作曲の「荒城の月」の作詞者としても知られ、校歌も数多く作詞した。
英文学者としは、ホメロス、カーライル、バイロンなどを翻訳。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。
- 著者 土井 晩翠
- 出版 青空文庫
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優しい日差しに包まれた昼下がりのひと時。 この音楽は、そんな午後の穏やかな陽だまりを描くように紡がれた一曲です。
この歌の主は、アメリカ・オレゴン州の小さな町コキール出身の女性シンガーソングライターのLaura Gibson ローラ・ギブソン。
「If You Come To Greet Me」と名付けられたアルバムに収録されています。
穏やかな陽だまりが心をゆっくりとほどいてゆくように、聴く人の心を穏やかに灯してくれる音楽です。
ニューヨークとオレゴンを拠点に、四大陸でのツアーを行うなど世界各地で音楽活動を行っている。 伝統的な民族音楽と実験的な精神の両方を大切にしながら領域にとらわれない幅広い音楽制作を行っている。
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いけない、いけない
静かにしてゐる此の水に手を触れてはいけない
まして石を投げ込んではいけない
一滴の水の微顫も
無益な千万の波動をつひやすのだ
水の静けさを貴んで
静寂の価を量らなければいけない
あなたは其のさきを私に話してはいけない
あなたの今言はうとしてゐる事は世の中の最大危険の一つだ
口から外へ出さなければいい
出せば則すなはち雷火である
あなたは女だ
男のやうだと言はれても矢張女だ
あの蒼黒い空に汗ばんでゐる円い月だ
世界を夢に導き、刹那を永遠に置きかへようとする月だ
それでいい、それでいい
その夢を現にかへし
永遠を刹那にふり戻してはいけない
その上
この澄みきつた水の中へ
そんなあぶないものを投げ込んではいけない
私の心の静寂は血で買つた宝である
あなたには解りやうのない血を犠牲にした宝である
この静寂は私の生命であり
この静寂は私の神である
しかも気むつかしい神である
夏の夜の食慾にさへも
尚ほ烈しい擾乱を惹き起すのである
あなたはその一点に手を触れようとするのか
いけない、いけない
あなたは静寂の価を量らなければいけない
さもなければ
非常な覚悟をしてかからなければいけない
その一個の石の起す波動は
あなたを襲つてあなたをその渦中に捲き込むかもしれない
百千倍の打撃をあなたに与へるかも知れない
あなたは女だ
これに堪へられるだけの力を作らなければならない
それが出来ようか
あなたは其のさきを私に話してはいけない
いけない、いけない
御覧なさい
煤烟と油じみの停車場も
今は此の月と少し暑くるしい靄との中に
何か偉大な美を包んでゐる宝蔵のやうに見えるではないか
あの青と赤とのシグナルの明りは
無言と送目との間に絶大な役目を果たし
はるかに月夜の情調に歌をあはせてゐる
私は今何かに囲まれてゐる
或る雰囲気に
或る不思議な調節を司つかさどる無形な力に
そして最も貴重な平衡を得てゐる
私の魂は永遠をおもひ
私の肉眼は万物に無限の価値を見る
しづかに、しづかに
私は今或る力に絶えず触れながら
言葉を忘れてゐる
いけない、いけない
静かにしてゐる此の水に手を触れてはいけない
まして石を投げ込んではいけない
東京美術学校(東京藝術大学)卒業後、彫刻修業のためアメリカとヨーロッパへ渡る。
パリでロダンに出会い大きな影響を受け、日本を代表する彫刻家であり画家となったが生前に残した『道程』『智恵子抄』などの詩集が広く知られ、日本文学の近現代を代表する詩人として位置づけられている。
- 著者 高村光太郎
- 出版 青空文庫
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現在の大阪郊外、淀川に近い村で生まれ、20歳前に江戸へ出ると、巴人(はじん)という俳人に師事して俳句を学び始める。
28歳の頃、俳号として「蕪村」を名乗り始め、松尾芭蕉への憧れから10年に近い放浪生活を重ね、42歳のときに京都へ定住した。
絵と俳句の両面で独自の世界観を描き出し、近代の俳人や詩人たちにも大きな影響を与えた。
- 編集 萩原朔太郎
- 著作 与謝蕪村
- 出版 青空文庫
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明け方のまだ淡い朝日に照らされた水面の光。
この音楽は、そんな朝の光に溶かされ、淡いオレンジの輝きに染まる水面をすくい上げるように紡がれた音響作品です。
「Shizuku」というアルバムの中に収められた一曲。
この曲は、東京を拠点に活動する音楽ユニットILLUHA イルハによって紡がれました。
アルバムの名前に付けられた「雫」という言葉。
この言葉が表すように、水と光が織りなす美しい雫のような時間を私たちの暮らしに届けてくれます。
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この本は、東山魁夷がドイツやオーストリアの古い町並みを旅しながら、その旅の中で感じた想いを自らの絵と文章で綴った本。
本の冒頭に、この言葉は添えられています。
- 著者 東山魁夷
- 出版 ビジョン企画出版社
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滴り落ちる水が反響し、美しい水音となって響き渡る。
この音楽は、まるで日本庭園の中にある水琴窟が奏でる音色のように、捉えどころのない自由な響きを紡ぐピアノ曲です。
「In The Mist」という名のアルバムに収められた一曲。
この曲は、アメリカの作曲家であり、ピアニストのハロルド・バッドによって紡がれました。
ささやくように揺らぐピアノの音色が穏やかな静寂を暮らしの中に届けてくれます。
カリフォルニア大学ノースリッジ校で学士号を取得するもミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じ、一時作曲活動を休止。
その後、ブライアン・イーノのプロデュースのもと、再デビュー・アルバムをリリース。
「作曲とは無駄なものを取り除いていくこと」という理念をもとに、ラディカル・シンプリシティをテーマに独自のアンビエント・ミュージックのスタイルを追究した。
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ある穏やかな午後の日。 ふと見上げた木々の隙間からこぼれ落ちる木漏れ日。 この音楽は、そんな穏やかな木漏れ日をすくい上げるように紡がれたピアノ曲です。
この曲を紡いだのは、デンマーク出身のピアニスト・作曲家である、ヤコブ・デイビッド(Jacob David)。 あたたかな木漏れ日が安らぎのひと時を描くように、穏やかな時間を私たちの暮らしの中に届けてくれます。
デンマークの首都であり、北欧最大の都市であるコペンハーゲンを拠点に活動を行う。
幼少期よりピアノに親しみ、ブルースからクラシックまで幅広い即興演奏を行いながら自身のスタイルを確立。
柔らかなピアノのタッチから紡がれる穏やかな音色が印象的な音楽家である。
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内省的な深い青色によって描かれる数々の作品には、独自の静謐な世界観が流れている。日本のみならず欧州の様々な土地を訪れ、その経験を通して自らの感性を磨いていった遍歴の画家である。
- 著者 東山魁夷
- 出版 ビジョン企画出版社
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おまへのことでいっぱいだった 西風よ
たるんだ唄のうたいやまない 雨の昼に
とざした窓のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら
おぼえてゐた おののきも 震えも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかってゐる
おまへのうたった とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだろう 誰が
それを忘れるのだろう……そうして
夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来る うすやみのなかに
おまへは 西風よ
みんななくしてしまった と
若干13歳にして自選の歌集や詩集をまとめ、第一高等学校在学中から堀辰雄と室生犀星に師事。
その後、東京帝国大学工学部建築学科に入学。同学部の1学年下には、丹下健三が在籍していた。
建築の分野でも際立った才能を発揮し、在学中に辰野金吾賞を3回受賞するなど将来を嘱望された。
さらに、詩の分野でも『萱草に寄す』と『曉と夕の詩』を立て続けに出版し、第1回中原中也賞を受賞するも結核を患い24歳という若さで帰らぬ人となる。
- 著者 立原道造
- 出版 青空文庫
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