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心の嵐が今去つたところだ
熱い嵐の中で、つめたい心がこゞえて
獣になつて魂の野を
走りまはつてゐた。
火に烙かれながら、一つの氷が
曇り日の天に向つて叫んだ。
心の嵐が今去つたところだ。
疲れた氷の火が静かにとけて
秋の曇り日の天の下に
春のやうなひかりを感じる。
やつと見つけたお母さんの乳房に
泣きじやくりながら、かじりつく赤ん坊に
私のこゝろは似てゐると思ふ。
1924年3月東京帝国大学ドイツ文学科卒業、同年4月より法政大学予科ドイツ語専任教授となる。
戦前に渡欧し、スイスにロマン・ロランのもとを訪れ、大きな影響を受ける。
西欧の文学と芸術を深く愛し、ロマン・ロラン、ヘッセ、リルケ、ハイネ、ゲーテといった独仏文学の翻訳も数多く手掛けた。
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ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
私も悲しまずにはいられない。
ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
慰める方法を考えずにはいられない。
涙がこぼれ落ちるのを見たら、
同じ気持ちにならずにはいられない。
父が子の泣く姿を見たら、
悲しみで胸がいっぱいにならずにはいられない。
子どもが幼い恐怖にうめき苦しんているのに、
母親は黙ってそれを聞いていることができるだろうか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。
まして私たちみなに微笑みかけて下さる方が、
鷦鷯の小さな悲しみを聞き
小鳥たちの憂いや悩みを聞き
子どもたち哀れな様子を聞いたら、
巣のかたわらに座って
彼らの胸に憐れみの心を注いだり、
揺りかごのそばに座って
子どもたちとともに涙せずにいられようか。
私たちの涙をぬぐうために、
昼も夜も私たちを見守らずにいられようか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。
その方はあらゆるものに歓びを与え、
その方は小さな子どもになられる。
その方は嘆きの人となって、
その方は悲しみをともにする。
あなたがため息をついているのにあなたを創った方が、
ため息をつかないなどと考えてはならない。
あなたが涙を流しているのにあなたを創った方が、
涙を流さないなどと考えてはならない。
おお、神は私たちに歓びをくださる、
神は私たちの悩みを打ち砕く、
私たちの悩みが消え去るまで、
神は私たちの傍らで悲しみつづける。
ブレイクは、ビジョンと呼ばれる幻視体験に基づいた特異な見解から同時代の人々からは狂人扱いされており、生前は詩人としては認められることはなく、一介の彫版師として生活した。
その後の批評家や読者からは、その表現力と創造性、そして作品内の哲学的・神秘主 義的な底流が高く評価されるようになり、ワーズ・ワース、コール・リッジらとともにイギリス・ロマン派の詩人の重要人物として知られている。
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アメリカ・ニューヨーク生まれの伝説的なフォークシンガー、ピート・シーガーが残したアルバム『Pete』に収められた一曲。
この『The Water is Wide(広い河の岸辺)』という曲は、作者不詳の民謡として知られ、その起源はスコットランドにあると伝えられています。
その後、イギリスからアメリカに移住した移民によってアメリカに伝えられ、フォーク・リヴァイヴァリストとしてウディ・ガスリーと共に数々の民謡を収集していた、ピート・シーガーの手によって現代のフォークソングとして新たな命を吹き込まれ、多くのアメリカ人に知られてゆくことになりました。
ピート・シーガーは生前、あくまで自分自身はフォークソングを歌うシンガーの一人であって、真のフォーク・シンガーは民衆であると語っていました。
彼が奏でるギターに合わせ、多くの人々が主役となり合唱するこの曲は、まさにそんな彼の哲学を表現している一曲とも言えるかもしれません。
多くの人々が共に歌うことで、はじめて顕れる音楽の美しさ。
この曲は、かつて当たり前のように暮らしの中に音楽があり、誰もが歌い手であった、そんな古の人々の暮らしを思い起こさせてくれる一曲です。
歌い継がれる民謡の中に確かに息づく、かつての人々の暮らしに想いを馳せながら、耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
ハーバード大学中退後に本格的な音楽活動を始め、黒人差別への抗議や反戦などの政治的な抗議メッセージを込めたプロテスト・フォークの旗手として注目を集める。
またアメリカ各地に残された民謡を収集するためアメリカ全土を放浪するなど、フォーク・リヴァイヴァリストとしての一面を持つ。
アメリカの現代フォークを代表する伝説的なフォークシンガーとして語り継がれ、フォークの神様とも称される音楽家ボブ・ディランにも多大な影響を与えた。
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おまへのことでいっぱいだった 西風よ
たるんだ唄のうたいやまない 雨の昼に
とざした窓のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら
おぼえてゐた おののきも 震えも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかってゐる
おまへのうたった とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだろう 誰が
それを忘れるのだろう……そうして
夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来る うすやみのなかに
おまへは 西風よ
みんななくしてしまった と
若干13歳にして自選の歌集や詩集をまとめ、第一高等学校在学中から堀辰雄と室生犀星に師事。
その後、東京帝国大学工学部建築学科に入学。同学部の1学年下には、丹下健三が在籍していた。
建築の分野でも際立った才能を発揮し、在学中に辰野金吾賞を3回受賞するなど将来を嘱望された。
さらに、詩の分野でも『萱草に寄す』と『曉と夕の詩』を立て続けに出版し、第1回中原中也賞を受賞するも結核を患い24歳という若さで帰らぬ人となる。
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明け方のまだ淡い朝日に照らされた水面の光。
この音楽は、そんな朝の光に溶かされ、淡いオレンジの輝きに染まる水面をすくい上げるように紡がれた音響作品です。
「Shizuku」というアルバムの中に収められた一曲。
この曲は、東京を拠点に活動する音楽ユニットILLUHA イルハによって紡がれました。
アルバムの名前に付けられた「雫」という言葉。
この言葉が表すように、水と光が織りなす美しい雫のような時間を私たちの暮らしに届けてくれます。
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青々と澄み切った湖面を包むように流れる霧。
この音楽は、そんな霧に包まれた静かな湖面に朧げに射す朝の光のような美しさを湛えた音響作品です。
「Cendre」フランス語で「灰」という意味を持つ名前のアルバムに収録された一曲。
この曲は、オーストリア出身の音楽家 クリスチャン・フェネスと坂本龍一の二人のコラボレーションによって生まれました。
静かに、ささやくように紡がれる美しい響きが澄み切った静謐な時間を私たちの暮らしの中に届けてくれます。
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私の室に一冊のよごれたバイブルがある。
椅子につかふ厚織更紗で表紙をつけて背に羊の皮をはつて NEW TESTAMENT. とかいて私はそれを永い間持つてゐる。
十余年間も有つてゐる。
それは私の室の美しい夥しい本の中でも一番古くよごれてゐる。
私は暗黒時代にはこのバイブル一冊しか机の上にもつてゐなかつた。
寒さや飢ゑや病気やと戦ひながら、私の詩が一つとして世に現はれないころに、私はこのバイブルをふところに苦しんだり歩いたりしてゐた。
いまその本をとつてみれば長い讃歎と吐息と自分に対する勝利の思ひ出とに、震ひ上つて激越した喜びをかんじるのであつた。
私はこれからのちもこのバイブルを永く持つて、物悲しく併し楽しげな日暮など声高く朗読したりすることであらう。
ある日には優しい友等とともに自分の過去を悲しげに語り明すことだらう。
どれだけ夥しく此聖書を接吻することだらう。
生後まもなく真言宗高野山派、千日山雨宝院にもらわれ、養父母のもとで育つ。
高等小学校を中退し、12歳で働きはじめた犀星は、文学への思いを募らせて20歳で単身上京、生活苦にあえぐなかで数々の詩を作った。
『愛の詩集』『抒情小曲集』などの抒情詩は大正期の詩壇を牽引し、さらに小説家としても活躍した。
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カナダ・モントリオールを拠点に活動するフォークシンガー兼プロデューサーのマーカス・ローリー(Marcus Lowry)による一曲。
「Rosie」と名付けられた、この曲は、マーカス・ローリーのデビューアルバムとなる 「Time, Time, Time」の中に収められています。
このアルバムがリリースされたのは、2023年9月。
僅か100部限定の自主リリースのレコードとして発表されました。
9曲の楽曲で構成され、まるで本のページをめくるように、喪失、叶わぬ夢、そして避けられない時の流れを語る、様々な物語が彼の優しい歌にのせて紡がれます。
「Rosie」は、このアルバムのはじまりの一曲。
この歌は、「ロージー」という一人の少女に捧げられた変わらぬ愛の想いが込められています。
それは、移ろいゆく時の流れの中で、決して変わることのない深い愛の物語。
人を愛することの儚さと美しさを教えてくれる一曲です。
今回は、英語の詞を稚拙ではありますが翻訳し、原文と併記するかたちで掲載させて頂きました。
紡がれる音楽だけでなく、その美しい詞の世界にも耳を澄ませながら、聴いてみて下さい。
きっとそれぞれの愛の物語が心の中で流れてゆくと思います。
「ロージー」 - この古い木の枝は、 私たち二人がぶら下がる場所だった そこで私たちは笑い、すべてを手に入れた しかし、ある日、私は見たんだ あの風が幾度も吹いてくることを そして、私は風に運ばれ落ちていった あの高い木の枝から 今、私は下にいるけれど 君が顔を赤らめ、成長するのを見るために、 今もここにいる この歌を歌うことを夢見てきた でも、私はもういない だから鳥たちは歌い続ける 愛しいロージー あなたはいつここに来るの? ロージー 愛しているよ 日は短くなり 夜は長くなる 今、大雨が降っているんだ 鳥はもう私たちの歌を歌わない 草が伸びて以来 草の葉が私を守ってくれる そして今、故郷のように感じる 時は流れ、私は老いてゆく 暗く寒くても 私は祈りながらここにいる いつかあなたが風に運ばれ落ちゆく時 あなたが私の道の上を転がってくれることを 願いながら 愛しいロージー あなたはいつ来るの? ロージー 愛しているよ (『Rosie / Marcus Lowry』より意訳) - 「Rosie」 - On a branch from this old tree A place where we'd hang across We'd laugh and have it all Although one day I did see That winds kept coming round And they made me fall From ten feet tall Now even though I'm down below I'm here to watch you blush and grow I've dreamt of singing you this song But now I'm gone And so the birds have to Keep singing on Rosie my dear When will you be here Rosie you know I love you so Days grow short and nights grow long Now heavy rains are falling Birds no longer sing our song And ever since the grass has grown Leaves have sheltered over me And now it feels like home Time goes by and I grow old And even though it's dark and cold I'll be here while I pray For you to fall one day And on that day I hope that You roll my way Rosie my dear When will you be here Rosie you know I love you so
幼少期から音楽に親しみ、フランスの作曲家ヴァンサン・ダンディの名を冠するカナダ・モントリオールの音楽学校「ヴァンサン・ダンディ音楽院」の初等科のヴァイオリン科を修了した後、10歳でヴァイオリンをギターに持ち替えることを決意。
その後、モントリオール大学でジャズ・パフォーマンスの学士号を取得して以降、様々な国内外のミュージシャンとしての共演しながら、シンガーソングライターとしての自身の音楽を育み続けている。
Mount Eerie マウント・イアリ や Tamas Wells タマズ・ウェルズといった穏やかで美しいフォークソングを歌うミュージシャンとも重なり合うような素晴らしい歌い手である。
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優しい日差しに包まれた昼下がりのひと時。 この音楽は、そんな午後の穏やかな陽だまりを描くように紡がれた一曲です。
この歌の主は、アメリカ・オレゴン州の小さな町コキール出身の女性シンガーソングライターのLaura Gibson ローラ・ギブソン。
「If You Come To Greet Me」と名付けられたアルバムに収録されています。
穏やかな陽だまりが心をゆっくりとほどいてゆくように、聴く人の心を穏やかに灯してくれる音楽です。
ニューヨークとオレゴンを拠点に、四大陸でのツアーを行うなど世界各地で音楽活動を行っている。 伝統的な民族音楽と実験的な精神の両方を大切にしながら領域にとらわれない幅広い音楽制作を行っている。
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穏やかな光に包まれた午後のある日。 この音楽は、そんな昼下がりにかすかな眠気に誘われて、空想と現実を漂う白昼夢のような世界観を持つ、幻想的な一曲です。
「新たな光の射す場所」という意味を持つ「Where Shine New Lights」という名のアルバムに収録された一曲。
この曲は、アメリカ・ケンタッキー州出身の女性シンガーソングライターのTara Jane O’Neil タラ・ジェイン・オニールによって紡がれました。
夢と現つを漂うようなこの曲は、忙しない日々から遠く離れた、もうひとつの時間を私たちの暮らしの中に届けてくれます。
ニューヨーク、ポートランドを経て、現在はロサンゼルスを拠点に活動を行う。また自らの作品のジャケットのアートワークを手掛け、ロンドン、東京、ポートランドなど世界各地で展覧会を行うなど、画家としての一面も併せ持つアーティストである。
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