こどもについて
Children
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想いを繋ぐということ
人から人に伝えてゆくこと、教えてゆくこと。
そうした機会に出会う度に、その行為の難しさに、頭を悩まされます。
余すことなく伝えることが常に正しいわけでもなく、その時々によってふさわしい伝え方があり、それぞれの適切なバランスがある。
そして、その関係性が近ければ、近いほど、その難しさは深まってゆくような気がします。
今回、ご紹介する「詩」は、そんな「伝えること」、「教えること」に向き合う時に、ひとつの手掛かりとなる詩だと考えています。
この詩は、遡るほど約100年ほど前。
レバノンに生まれ、欧米を中心に活躍した詩人、カリール・ジブラーンによって紡がれました。
翻訳は、その生涯をハンセン病患者と寄り添ってゆくことに捧げた、精神科医・神谷美恵子氏によるものです。
今回ご紹介する詩だけでなく、数多くの素晴らしい詩をその生涯で紡いだカリール・ジブラーン。
また折りを見て、その他の作品もご紹介させて頂きたいと思います。
ぜひお読み頂けますと幸いです。
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赤ん坊を抱いたひとりの女が言った。
どうぞ子どもたちの話をしてください。
それで彼は言った。
あなたがたの子どもたちは
あなたがたのものではない。
彼らはいのちそのものの
あこがれの息子や娘である。
彼らはあなたがたを通して生まれてくるけれども
あなたがたから生じたものではない、
彼らはあなたがたと共にあるけれども
あなたがたの所有物ではない。
あなたがたは彼らに愛情を与えうるが、
あなたがたの考えを与えることはできない、
なぜなら彼らは自分自身の考えを持っているから。
あなたがたは彼らのからだを宿すことはできるが
彼らの魂を宿すことはできない、
なぜなら彼らの魂は明日の家に住んでおり、
あなたがたはその家を夢にさえ訪れられないから。
あなたがたは彼らのようになろうと努めうるが、
彼らに自分のようにならせようとしてはならない。
なぜなら生命はうしろへ退くことはなく
いつまでも昨日のところに
うろうろ ぐずぐず してはいないのだ。
あなたがたは弓のようなもの、
その弓からあなたがたの子どもたちは
生きた矢のように射られて、前へ放たれる。
射る者は永遠の道の上に的をみさだめて
力いっぱいあなたがたの身をしなわせ
その矢が速く遠くとび行くように力をつくす。
射る者の手によって
身をしなわせられるのをよろこびなさい。
射る者はとび行く矢を愛するののと同じように
じっとしている弓をも愛しているのだから。
Info
カリール・ジブラーン
カリール・ジブラーン(1883年 〜 1931年)は、レバノン出身の詩人。
宗教的で、哲学的な香気を漂わせる数々の作品は、アラビア諸国だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、南米、中国まで幅広い国々で、今なお多くの人々に親しまれている。主著『預言者』は、世界30数ヵ国語に翻訳されている。
レバノン山間部にある、聖なる谷という意味を持つ、ビッシャリという名の村で生まれ、原始キリスト教の流れを汲むマロン派のカトリック司祭の娘であった母親のもと、誕生後すぐに同派の洗礼を受ける。
しかし、25歳の時、信仰と自らの考えとの折り合いがつかず、同協会から破門。さらに祖国からも追放される。その後、欧米で暮らし、中近東と西洋の精神を混ぜ合わせた独自の世界観を育む。
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Reference :
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「ハリール・ジブラーンの詩」
- 翻訳:
- 神谷美恵子
- 出版:
- 角川文庫
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