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2021.7.12

隠された記憶を紡いだ写真家
ルイス・ハイン Lewis Hine

  • text STUDIO HAS

1874年、アメリカ合衆国・中西部にあるウィスコンシン州出身の写真家ルイス・ハイン。
ルイス・ハインは、写真家になる以前は教師として働いていた。
ハインが生きた時代は、ヨーロッパで産業革命が起き、アメリカ各地でも大型の機械が導入された工場が建設され、工場で働く数多くの労働者が必要とされていた。
しかし、その労働条件は過酷極まりなく、求められていたのは、低賃金で、長い時間働ける労働者であった。
そうした条件に合う労働力として、多くの幼い子どもたちが駆り出されていたのだ。

今の私たちの時代、特に日本においては想像すら出来ないが、子供たちは安い賃金で雇うことができ、幼過ぎて労働環境に対して文句を言うことが出来ないゆえに、経営者にとって都合の良い労働力として扱われていたのだ。
本来、学校に通い、元気に遊んでいるはずの子供達が、その機会を搾取され、働かされていたのだった。

そんな発展する時代の背景に隠されていた、暗く悲しい現実に光を当てるために、ルイス・ハインは、教師を辞め、写真家として歩み始める。
幼い子供が働いている現場を写真に収めるため、数多くの現場に潜り込んだ。
だがそれは経営者にとって都合の良いことではなく、嫌がらせや暴力などの危険な目に遭いながらの命懸けの撮影であった。
しかし、そうした撮影を重ね、様々な子供たちの労働の現実を写真に収め、ついに新聞の紙面上での写真の発表にたどり着く。
その写真は、アメリカ国内で大きなセンセーションを引き起こし、児童労働について改善する動きを生み出す大きなきっかけを作り出すことになった。

「私は、教育者としての努力の対象を教室の生徒から世界中の子どもたちに広げたにすぎません。」

写真家への転身の理由をこう語ったルイス・ハインの眼差には、教師の時と変わることのない、温かな子どもたちへの愛情が流れていた。

だが、世界に目を向けてみると、決して児童労働の問題は解決されたわけではないということに気付かされる。
今まさに、世界のどこかで不当に働かされている子供たちがいることを。
ルイス・ハインが残した眼差は、決して過ぎ去った時代を伝えるものではなく、今まさに取り組まなければならない課題が残されていることを私たちに教えてくれるのではないだろうか。

ボビンを取り替えるために機械によじのぼる少年
綿花を摘むマート, 5歳
ガラス工場で働く少年 バージニア州アレキサンドリア, 1911
靴下工場 テネシー州ラウドン, 1910
クランベリーを運ぶ5歳のサルビン ニュージャージー州ブラウンズ・ミルズ, 1910
靴下工場の少女たち テネシー州ラウドン, 1910
  • text STUDIO HAS

Reference :

  • ちいさな労働者
    著者:
    ラッセル・フリードマン
    翻訳:
    千葉茂樹
    出版:
    あすなろ書房
Category :
  • text
    STUDIO HAS

    STUDIO HAS(スタジオ・ハス)は、京都を拠点に、編集とデザインを通して、 暮らしの中にある物語を紡いでいくクリエイティブスタジオです。
    美しい物語と人を繋いでいくことを指針とし、HAS Magazine(ハス・マガジン)の運営の他、様々なデザインワークを手掛けている。

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