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煙草は私の旅びとである
尾形亀之助
『色ガラスの街』より

朝早くから雨が降つてゐた
そして 暗い日暮れに風が吹いて流れ
雨にとけこむ日暮れを泥ぶかい沼の底の魚のやうに
私と私の妻がゐる 私は二階の書斎に 妻は台所にゐる

これは人のゐない街だ
一人の人もゐない、犬も通らない丁度ま夜中の街をそのままもつて来たやうな気味のわるい街です
街路樹も緑色ではなく
敷石も古るぼけて霧のやうなものにさへぎられてゐる
どことなく顔のやうな街です

風も雨も陽も
ひよつとすると空もない平らな腐れた花の匂ひのする街です
何時頃から人が居なくなつたのか
何故居なくなつたのか
少しもわからない街です

それは
「こんにちは」とも言はずに私の前を通つてゆく
私の旅びとである

そして
私の退屈を淋しがらせるのです

Artist
尾形亀之助
尾形 亀之助(おがた かめのすけ/1900 - 1942年)は、宮城県出身の詩人。
裕福な実家に生まれ、画家を目指して上京、モダニズム絵画「化粧」を発表し、日本のダダイスムの先駆をなす、大正デモクラシーの動向を受けて誕生した前衛美術グループ「MAVO:マヴォ」の初期メンバーとして注目を浴びた。
しかし、2年あまりで美術界を去り、詩作に専念、詩人に転身する。
生涯にわたってほぼ定職を持たず実家からの仕送りで生活し、詩に没頭するという無頼の人生を送った。
Refference
色ガラスの街

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  • 著者 尾形亀之助

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  • 出版 青空出版

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Little Gray Cat
Grouper
重なり合う幽玄な歌声を
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重なり合う幽玄な歌声を

アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト Grouperと Inca Ore の Splitアルバムからの一曲。それぞれの繊細な歌声がレイヤーのように重なり合い、幽玄な時間を紡ぎ出す美しい一曲です。

Artist
Grouper
アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト、Liz Harris リズ・ハリス のソロ・プロジェクト Grouper。
空間を満たすサウンドスケープとシンプルなピアノの音色を背景に、ささやくような歌声を重ね合わせ、幻想的な世界観を生み出している。
また音楽のみならず、自らのアルバムジャケットのアートワークも手掛けるなど、音楽とアートの垣根を越えた表現を行う。
Refference
Little Gray Cat
  • ArtistGrouper
  • AlbumGrouper
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Rosie
Marcus Lowry
変わらぬ愛を詠う歌
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変わらぬ愛を詠う歌

カナダ・モントリオールを拠点に活動するフォークシンガー兼プロデューサーのマーカス・ローリー(Marcus Lowry)による一曲。

「Rosie」と名付けられた、この曲は、マーカス・ローリーのデビューアルバムとなる 「Time, Time, Time」の中に収められています。
このアルバムがリリースされたのは、2023年9月。
僅か100部限定の自主リリースのレコードとして発表されました。

9曲の楽曲で構成され、まるで本のページをめくるように、喪失、叶わぬ夢、そして避けられない時の流れを語る、様々な物語が彼の優しい歌にのせて紡がれます。

「Rosie」は、このアルバムのはじまりの一曲。
この歌は、「ロージー」という一人の少女に捧げられた変わらぬ愛の想いが込められています。

それは、移ろいゆく時の流れの中で、決して変わることのない深い愛の物語。
人を愛することの儚さと美しさを教えてくれる一曲です。

今回は、英語の詞を稚拙ではありますが翻訳し、原文と併記するかたちで掲載させて頂きました。
紡がれる音楽だけでなく、その美しい詞の世界にも耳を澄ませながら、聴いてみて下さい。

きっとそれぞれの愛の物語が心の中で流れてゆくと思います。

ロージー」
-
この古い木の枝は、
私たち二人がぶら下がる場所だった
そこで私たちは笑い、すべてを手に入れた
しかし、ある日、私は見たんだ
あの風が幾度も吹いてくることを
そして、私は風に運ばれ落ちていった
あの高い木の枝から

今、私は下にいるけれど
君が顔を赤らめ、成長するのを見るために、
今もここにいる
この歌を歌うことを夢見てきた
でも、私はもういない
だから鳥たちは歌い続ける

愛しいロージー
あなたはいつここに来るの?
ロージー
愛しているよ

日は短くなり 夜は長くなる
今、大雨が降っているんだ
鳥はもう私たちの歌を歌わない
草が伸びて以来
草の葉が私を守ってくれる
そして今、故郷のように感じる

時は流れ、私は老いてゆく
暗く寒くても
私は祈りながらここにいる
いつかあなたが風に運ばれ落ちゆく時
あなたが私の道の上を転がってくれることを
願いながら

愛しいロージー
あなたはいつ来るの?
ロージー
愛しているよ
(『Rosie / Marcus Lowry』より意訳)

-
「Rosie」
-
On a branch from this old tree
A place where we'd hang across
We'd laugh and have it all
Although one day I did see
That winds kept coming round
And they made me fall
From ten feet tall

Now even though I'm down below
I'm here to watch you blush and grow
I've dreamt of singing you this song
But now I'm gone
And so the birds have to
Keep singing on

Rosie my dear
When will you be here
Rosie you know
I love you so

Days grow short and nights grow long
Now heavy rains are falling
Birds no longer sing our song
And ever since the grass has grown
Leaves have sheltered over me
And now it feels like home

Time goes by and I grow old
And even though it's dark and cold
I'll be here while I pray
For you to fall one day
And on that day I hope that
You roll my way

Rosie my dear
When will you be here
Rosie you know
I love you so
Artist
Marcus Lowry
Marcus Lowry マーカス・ローリーは、カナダ・モントリオールを拠点に活動する、フォークシンガー兼プロデューサー。
幼少期から音楽に親しみ、フランスの作曲家ヴァンサン・ダンディの名を冠するカナダ・モントリオールの音楽学校「ヴァンサン・ダンディ音楽院」の初等科のヴァイオリン科を修了した後、10歳でヴァイオリンをギターに持ち替えることを決意。

その後、モントリオール大学でジャズ・パフォーマンスの学士号を取得して以降、様々な国内外のミュージシャンとしての共演しながら、シンガーソングライターとしての自身の音楽を育み続けている。
Mount Eerie マウント・イアリ や Tamas Wells タマズ・ウェルズといった穏やかで美しいフォークソングを歌うミュージシャンとも重なり合うような素晴らしい歌い手である。
Refference
Rosie
  • ArtistMarcus Lowry
  • AlbumMarcus Lowry
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Healing Is A Miracle
Julianna Barwick
奇跡のような癒しを紡ぐ歌声
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奇跡のような癒しを紡ぐ歌声

アメリカ・ルイジアナ州出身、現在はロサンゼルスを拠点に活動する作曲家・ヴォーカリスト・プロデューサーのジュリアナ・バーウィック(Julianna Barwick)による一曲。

この曲と同じタイトルが付けられたアルバムの題名は『Healing Is A Miracle』。
このアルバムのテーマは「自然治癒能力」。
人間の体が自らを癒す「自然治癒能力」の奇跡のような働きにインスパイアされ、生み出された一曲です。

そんな彼女の歌声が紡ぎ出す幻想的な時間は、耳を傾ける人々の心を穏やかに癒してくれます。
それはまさに彼女が想い描く奇跡のような癒しの力なのかもしれません。

Artist
Julianna Barwick
ジュリアナ・バーウィック(Julianna Barwick)は、アメリカ・ルイジアナ州出身、現在はロサンゼルスを拠点に活動する作曲家・ヴォーカリスト・プロデューサー。
子供時代のルイジアナでの聖歌隊での活動を背景に、自身のヴォーカルをモチーフにサンプラーを用いて幾重にも歌声を重ねながら作曲する、独自のスタイルを持つ音楽家である。
Refference
Healing Is A Miracle
  • ArtistJulianna Barwick
  • AlbumJulianna Barwick
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Will I Know
Sea Oleena
透明な光をすくうように
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透明な光をすくうように

澄み切った水面に零れ落ちる光。
この曲は、そんな自然が描く束の間のひと時をすくい上げるように紡がれた楽曲です。

この曲は、カナダ・サスカチュワン州出身の女性アーティストCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニット、Sea Oleena (シー・オリーナ)によって紡がれました。

彼女が生まれたカナダ・サスカチュワン州は、広大な草原と十万を数える湖と川が流れ、果てしなく広がる青い空に包まれた雄大な自然が息づく土地。
まるで美しい自然のひと時を紡ぐような彼女の音楽は、そんな彼女の心の中に流れる心象風景を描いたものなのかもしれません。

Artist
Sea Oleena
カナダ・モントリオール在住の女性アーティスト、ヴォーカリスト/多楽器奏者のCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニットSea Oleena (シー・オリーナ)。

子供時代にピアノ教室に通うも馴染まず、独学で作曲を始める。その後、偶然実家の空き部屋のベッドの下に、古いアコースティックを見つけたことがきっかけとなり、最初のセルフアルバムを完成する。
Refference
Will I Know
  • ArtistSea Oleena
  • AlbumSea Oleena
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ひとの悲しみに
ウィリアム・ブレイク
『無垢と経験のうた』より

ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
私も悲しまずにはいられない。
ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
慰める方法を考えずにはいられない。

涙がこぼれ落ちるのを見たら、
同じ気持ちにならずにはいられない。
父が子の泣く姿を見たら、
悲しみで胸がいっぱいにならずにはいられない。

子どもが幼い恐怖にうめき苦しんているのに、
母親は黙ってそれを聞いていることができるだろうか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

まして私たちみなに微笑みかけて下さる方が、
鷦鷯みそさざいの小さな悲しみを聞き
小鳥たちの憂いや悩みを聞き
子どもたち哀れな様子を聞いたら、

巣のかたわらに座って
彼らの胸に憐れみの心を注いだり、
揺りかごのそばに座って
子どもたちとともに涙せずにいられようか。

私たちの涙をぬぐうために、
昼も夜も私たちを見守らずにいられようか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

その方はあらゆるものに歓びを与え、
その方は小さな子どもになられる。
その方は嘆きの人となって、
その方は悲しみをともにする。

あなたがため息をついているのにあなたを創った方が、
ため息をつかないなどと考えてはならない。
あなたが涙を流しているのにあなたを創った方が、
涙を流さないなどと考えてはならない。

おお、神は私たちに歓びをくださる、
神は私たちの悩みを打ち砕く、
私たちの悩みが消え去るまで、
神は私たちの傍らで悲しみつづける。

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Artist
ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク(1757-1827年)はイギリスの詩人・画家・版画家。
ブレイクは、ビジョンと呼ばれる幻視体験に基づいた特異な見解から同時代の人々からは狂人扱いされており、生前は詩人としては認められることはなく、一介の彫版師として生活した。
その後の批評家や読者からは、その表現力と創造性、そして作品内の哲学的・神秘主 義的な底流が高く評価されるようになり、ワーズ・ワース、コール・リッジらとともにイギリス・ロマン派の詩人の重要人物として知られている。
Refference
無垢と経験のうた

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  • 著者 ウィリアム・ブレイク

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  • 出版 青空文庫

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The Isle
Valentin Silvestrov
静謐な祈りを描くように
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静謐な祈りを描くように

この曲は、ウクライナ・キーウ出身の現代音楽・作曲家 Valentin Silvestrov (ヴァレンティン・シルヴェストロフ)によって紡がれました。
かつて彼は、前衛的な音楽作品を発表していたのですが、ある時期を境に、メロディを重んじた伝統的な作曲手法に回帰するようになりました。

「メロディとは音楽の宝石である。」
(ミュージック・レビュー・サイト『Mikiki』より引用)

これは、彼が過去に美しいメロディーへの想いを語った言葉。
前衛的な現代音楽から消えてしまった美しいメロディーを手繰り寄せるように紡がれた数々の作品の中には、過ぎ去りし日々への静かな祈りが流れているような気がします。

Artist
Valentin Silvestrov
1937年、ウクライナ・キーウ出身の現代音楽・作曲家、Valentin Silvestrov(ヴァレンティン・シルヴェストロフ)。
彼が音楽に目覚めたのは15歳と比較的遅く、当初は独学だったが、その後、キエフ夜間音楽学校でピアノを学ぶ。
ソ連支配下の60年代には、前衛的作品で西側から称賛を受けるも、ソ連当局からは冷遇され演奏機会に恵まれなかった。

70年代以降は、調性の破壊と言った前衛的な作曲手法から離れ、メロディーを重んじた伝統的な音楽と現代的な感覚を併せ持つ数々の作品を発表する。

同じく東欧にルーツを持つ、現代音楽を代表する二人の作曲家、アルフレッド・シュニトケとアルヴォ・ペルトをして「現代最高の作曲家のひとり」と称される音楽家である。
Refference
The Isle
  • ArtistValentin Silvestrov
  • AlbumValentin Silvestrov
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When We Fail
Grouper
朝靄に包まれるような美しさを
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朝靄に包まれるような美しさを

木々の隙間から微かに零れる光が朝靄を静かに染める夜明け。
この音楽は、そんな美しい朝のひと時をすくい上げるように紡がれた一曲です。

この曲は、アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト Grouperの5作目となるアルバム「Dragging a Dead Deer up a Hill」の中に収録されています。

淡い光に包まれる、儚く美しい朝のひと時のような時間を私たちに届けてくれます。

Artist
Grouper
アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト、Liz Harris リズ・ハリス のソロ・プロジェクト Grouper。
空間を満たすサウンドスケープとシンプルなピアノの音色を背景に、ささやくような歌声を重ね合わせ、幻想的な世界観を生み出している。
また音楽のみならず、自らのアルバムジャケットのアートワークも手掛けるなど、音楽とアートの垣根を越えた表現を行う。
Refference
When We Fail
  • ArtistGrouper
  • AlbumGrouper
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The Sea & the Rhythm
Iron & Wine
懐かしい友と巡り会うように
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懐かしい友と巡り会うように

ふと昔懐かしい友を想い出す時。 心の片隅に残された、かつての記憶が穏やかに灯されてゆきます。 この音楽は、そんな懐かしい友と巡り会う時間を思いおこしてくれる一曲です。

「The Sea & the Rhythm」という曲名と同じ、アルバムに収録された一曲。 この曲は、アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター Iron & Wine アイアン・アンド・ワインによって紡がれました。

歩み続ける日々から少し立ち止まり、過ぎ去りし時を想う時間。 そんな穏やかな郷愁に寄り添う美しい音楽です。

Artist
Iron & Wine
アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター、サム・ビームことアイアン・アンド・ワイン。
その名前は、自身が映画を撮影している際に、偶然雑貨店で見つけたサプリメント「Beef Iron & Wine」から名付けたという。
どこか懐かしい穏やかな歌声を特徴とする音楽家である。
Refference
The Sea & the Rhythm
  • ArtistIron & Wine
  • AlbumIron & Wine
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茶っぽく青い樫の梢から見える、高あく澄んだ青空をながめると、変なほど雲がない。
宮本 百合子
『秋風』より
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Artist
宮本 百合子
宮本 百合子(みやもと ゆりこ / 1899 - 1951年)は、東京・文京区出身の小作家・思想家。
若干18歳で『貧しき人々の群』で文壇に鮮烈にデビューし、天才少女と注目された。
女性の自立を追求した作品「伸子」を発表した後、1928年新しい発展をもとめてソ連、ヨーロッパで生活。
その後ソ連を訪れ日本共産党に入党。宮本顕治と結婚。再三検挙されながらも執筆活動を続けた。戦後は民主主義文学運動の出発を宣言。
日本の左翼文学・民主主義文学、さらには日本の近代女流文学を代表する作家の一人である。
Refference
秋風

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  • 著者 宮本百合子

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  • 出版 青空文庫

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水のほとり
三富朽葉
『青空文庫』より

水のほとりにこぼれる
響ない真昼の樹魂こだま

物のおもひの降り注ぐ
はてしなさ。

充ちて消えゆく
もだしのこたへ。

水のほとりに生もなく死もなく、
声ない歌、
書かれぬ詩、
いづれかうるはしからぬ自らがあらう?

たまたま過ぎる人の姿、獣のかげ、
それは皆遠くへ行くのだ。

色、

光り、
永遠に続く中。

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Artist
三富朽葉
詩人。名は「きゅうよう」とも。早稲田大学英文科卒。1909(明治42)年、人見東明、加藤介春らとともに自由詩社をおこし、口語自由詩を唱道。機関誌の「自然と印象」、「早稲田文学」等に作品を発表。
1917(大正6)年、犬吠岬にて溺れた友人の今井白楊を助けようとし海に入るが、そのまま帰らぬ人となってしまう。享年27歳。あまりに早い最期だった。
Refference
青空文庫

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  • 著者 三富朽葉

  • Warning: Undefined variable $single_number in /home/studiohas/has-mag.jp/public_html/wp-content/themes/HAS_Magazine_2025_1211/template/retreat/poetry-parts.php on line 81
  • 出版 青空文庫

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