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水汲み
田辺利宏
『きけ わだつみのこえ - 日本戦没学生の手記』より

はだしの少女は
髪に紅い野薔薇を挿し
夕日の坂を降りて来る。

石だたみの上に
少女の足は白くやわらかい。

夕餉の水を汲みに
彼女は城外の流れまでゆくのだ。

しずかな光のきらめく水をすくって
彼女はしばらく地平線の入日に見入る。

果てしもない緑の海の彼方に
彼女の幸福が消えてゆくように思う。

おおきな赤い大陸の太陽は
今日も五月の美しさを彼女に教えた。

揚柳の小枝に野鳩が鳴いている。
日が落ちても彼女はもう悲しまない。

太陽は明日を約束してわかれたからだ。
少女はしっかりと足を踏んで夕ぐれに忙しい城内の町へ
美しい水を湛えてかえってゆくのだ。

Artist
田辺利宏
1915年5月19日生まれ。岡山県出身。
30年4月、上京して神田の帝国書院に勤めながら、法政大学商業学校に通う。
34年4月、商業学校を卒業し、日本大学予科文科に入学。
36年3月、同大学文学部文学科英文科進学、39年卒業。
39年9月、広島県福山市の増川高等女学校に勤め、英語と国語を教える。
39年12月、松江に入営。後中国各地を転戦。
41年8月24日、中国江蘇省北部にて戦死。享年26歳。
Refference
きけ わだつみのこえ - 日本戦没学生の手記

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  • 編集 日本戦没学生記念会

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  • 出版 岩波文庫

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Vendredi
Tamas Wells
安息の地へと誘う優しい歌を
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安息の地へと誘う優しい歌を

吹き抜ける風、やわらかな木漏れ日、穏やかな川のせせらぎ。 美しい自然が訪れる人をそっと包み込むような場所。 この音楽には、まるでそんな安息の地へと誘うような優しい歌声が流れています。

「A Plea En Vendredi」というアルバムの中に収められた一曲。 この曲は、オーストラリア出身の学者であり、シンガーソングライターのタマズ・ウェルズによって紡がれました。

聴く人の心を優しく包み込むような彼の歌は、安らぎの地の穏やかな木漏れ日のように、あたたかな時間を私たちに届けてくれます。

Artist
Tamas Wells
オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、タマズ・ウェルズ。
彼は、2006年から2012年の6年間をミャンマーで過ごし、現地のNGOでHIV/エイズ教育のヘルスワーカーやフィールドワーカーの仕事をしていた。
その後メルボルンに戻り、メルボルン大学でビルマ政治学の博士号を取得し、現在は学者として暮らしている。
そんな彼の奏でる歌声は、澄み切った優しさに包まれ、「天使の歌声」とも称される。
異色の経歴を持つシンガーソングライターである。
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Vendredi
  • ArtistTamas Wells
  • AlbumTamas Wells
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Forget About
Sibylle Baier
古いアルバムをめくるように
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古いアルバムをめくるように

色褪せた写真。
その写真に残る記憶を手繰り寄せるように、過ぎ去った日々を思い返す時間。
この音楽は、そんな淡い郷愁を想い描くように紡がれた一曲です。

この曲の歌い手は、かつてドイツで女優として活動していたSibylle Baier シビル・ベイヤー。
彼女は、役者業の傍らで音楽活動を行っていたのですが、当時は作品発表にまでは至りませんでした。

ですが時を経て、ホームレコーディングで録音していた音源を息子が見つけたことをきっかけに、30年後の2006年に唯一のアルバム作品「Colour Green」が発表されました。

この曲には、彼女の音楽が辿った運命のように、まるで時の彼方に忘れ去られたかのような郷愁を帯びた美しい歌声が流れています。

Artist
Sibylle Baier
シビル・ベイヤーは、ドイツの女優であり、シンガーソングライター。
1970年代には女優として活動し、ヴェム・ヴェンダース監督映画「都会のアリス」等に出演する。
その役者の傍ら音楽活動を行うが作品発表にまでは至らなかった。
だが時を経て、ホームレコーディングで録音していた音源を息子が発見する。
その音源をダイナソーJr.のJ.マスシスに手渡したことがきっかけとなり、30年後の2006年に唯一のアルバム作品「Colour Green」が発表された。
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Forget About
  • ArtistSibylle Baier
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Haru Spring
Harold Budd
響き渡る水の音のように
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響き渡る水の音のように

滴り落ちる水が反響し、美しい水音となって響き渡る。
この音楽は、まるで日本庭園の中にある水琴窟が奏でる音色のように、捉えどころのない自由な響きを紡ぐピアノ曲です。

「In The Mist」という名のアルバムに収められた一曲。
この曲は、アメリカの作曲家であり、ピアニストのハロルド・バッドによって紡がれました。

ささやくように揺らぐピアノの音色が穏やかな静寂を暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Harold Budd
ハロルド・バッド (1936年5月24日 - 2020年12月8日)は、アメリカ合衆国の作曲家であり、ピアニスト。
カリフォルニア大学ノースリッジ校で学士号を取得するもミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じ、一時作曲活動を休止。
その後、ブライアン・イーノのプロデュースのもと、再デビュー・アルバムをリリース。
「作曲とは無駄なものを取り除いていくこと」という理念をもとに、ラディカル・シンプリシティをテーマに独自のアンビエント・ミュージックのスタイルを追究した。
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Haru Spring
  • ArtistHarold Budd
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The Moon Is a Harsh Mistress
Radka Toneff
澄み切った月の光のように
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澄み切った月の光のように

月の光に照らし出された夜のひと時。 淡い月の光が描く、どこか神秘的な世界。 この音楽は、そんな美しい月の光に寄り添うような一曲です。

「Fairytales」と名付けられたアルバムに収録された一曲。 この曲は、わずか30歳の若さでこの世を去ったノルウェー出身のジャズ・シンガー Radoka Toneff ラドカ・トネフによって紡がれました。

柔らかな月の光が辺りを包み、幻想的な時間が流れ出すように、神秘的で穏やかな美しさを暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Radka Toneff
ラドカ・トネフ(1952年6月25日-1982年10月21日)は、ノルウェー出身のジャズ・シンガー。
わずか3枚のアルバムを残し、30歳の若さでこの世を去る。哀しくも彼女にとって最後のアルバムとなった『Fairytales』は、発売後10万枚以上の売上を記録し、ノルウェーのジャズ・アルバムで最も売れた作品となる。
名実ともにノルウェーのジャズシーンを代表する伝説的なシンガーの一人である。
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The Moon Is a Harsh Mistress
  • ArtistRadka Toneff
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美の遊行者
大手拓次
『藍色の蟇』より

そのむかし、わたしの心にさわいだ野獣の嵐が、
初夏の日にひややかによみがへつてきた。

すべての空想のあたらしい核たねをもとめようとして南洋のながい髪をたれた女鳥のやうに、いたましいほどに狂ひみだれたそのときの一途の心がいまもまた、このおだやかな遊惰の日に法服をきた昔の知り人のやうにやつてきた。

なんといふあてもない寂しさだらう。
白磁の皿にもられたこのみのやうに人を魅する冷たい哀愁がながれでる。

わたしはまことに美の遊行者であつた。

苗床のなかにめぐむ憂ひの芽、望みの芽、
わたしのゆくみちには常にかなしい雨がふる。

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Artist
大手拓次
大手 拓次(おおてたくじ / 1887 - 1934年)は、群馬県出身の日本の詩人。
早稲田大学第三高等予科を経て、1907年9月、早稲田大学文学学術院英文科に入学。この頃より詩の発表を始める。
1916年にライオン歯磨本舗に就職。以後、生涯をサラリーマンと詩人の二重生活に捧げた。
生涯に書かれた詩作品は2400近くにのぼる。作品の発表を盛んに行っていたものの、生前に詩集が発刊されることはなかった。
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藍色の蟇

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  • 著者 大手拓次

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  • 出版 青空文庫

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The Sea & the Rhythm
Iron & Wine
懐かしい友と巡り会うように
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懐かしい友と巡り会うように

ふと昔懐かしい友を想い出す時。 心の片隅に残された、かつての記憶が穏やかに灯されてゆきます。 この音楽は、そんな懐かしい友と巡り会う時間を思いおこしてくれる一曲です。

「The Sea & the Rhythm」という曲名と同じ、アルバムに収録された一曲。 この曲は、アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター Iron & Wine アイアン・アンド・ワインによって紡がれました。

歩み続ける日々から少し立ち止まり、過ぎ去りし時を想う時間。 そんな穏やかな郷愁に寄り添う美しい音楽です。

Artist
Iron & Wine
アメリカ・サウスカロライナ州出身のシンガーソングライター、サム・ビームことアイアン・アンド・ワイン。
その名前は、自身が映画を撮影している際に、偶然雑貨店で見つけたサプリメント「Beef Iron & Wine」から名付けたという。
どこか懐かしい穏やかな歌声を特徴とする音楽家である。
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The Sea & the Rhythm
  • ArtistIron & Wine
  • AlbumIron & Wine
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Will I Know
Sea Oleena
透明な光をすくうように
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透明な光をすくうように

澄み切った水面に零れ落ちる光。
この曲は、そんな自然が描く束の間のひと時をすくい上げるように紡がれた楽曲です。

この曲は、カナダ・サスカチュワン州出身の女性アーティストCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニット、Sea Oleena (シー・オリーナ)によって紡がれました。

彼女が生まれたカナダ・サスカチュワン州は、広大な草原と十万を数える湖と川が流れ、果てしなく広がる青い空に包まれた雄大な自然が息づく土地。
まるで美しい自然のひと時を紡ぐような彼女の音楽は、そんな彼女の心の中に流れる心象風景を描いたものなのかもしれません。

Artist
Sea Oleena
カナダ・モントリオール在住の女性アーティスト、ヴォーカリスト/多楽器奏者のCharlotte Oleena (シャルロット・オリーナ)によるソロ・ユニットSea Oleena (シー・オリーナ)。

子供時代にピアノ教室に通うも馴染まず、独学で作曲を始める。その後、偶然実家の空き部屋のベッドの下に、古いアコースティックを見つけたことがきっかけとなり、最初のセルフアルバムを完成する。
Refference
Will I Know
  • ArtistSea Oleena
  • AlbumSea Oleena
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Kie
Illuha
水面の光をすくい上げるように
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水面の光をすくい上げるように

明け方のまだ淡い朝日に照らされた水面の光。
この音楽は、そんな朝の光に溶かされ、淡いオレンジの輝きに染まる水面をすくい上げるように紡がれた音響作品です。

「Shizuku」というアルバムの中に収められた一曲。
この曲は、東京を拠点に活動する音楽ユニットILLUHA イルハによって紡がれました。

アルバムの名前に付けられた「雫」という言葉。
この言葉が表すように、水と光が織りなす美しい雫のような時間を私たちの暮らしに届けてくれます。

Artist
Illuha
イルハは、アメリカ生まれ、日本育ちの Corey Fuller コリー・フラーとブラジル生まれ、日本育ちの伊達伯欣による、東京を拠点にする音楽ユニット。
アコースティック楽器の音色と電子楽器による音の響きを重ね合わせながら、柔らかで美しい音響世界を作り上げている。
Refference
Kie
  • ArtistIlluha
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愛の詩集の本文より
室生 犀星
『愛の詩集』より

私の室に一冊のよごれたバイブルがある。
椅子につかふ厚織更紗で表紙をつけて背に羊の皮をはつて NEW TESTAMENT. とかいて私はそれを永い間持つてゐる。
十余年間も有つてゐる。

それは私の室の美しい夥しい本の中でも一番古くよごれてゐる。
私は暗黒時代にはこのバイブル一冊しか机の上にもつてゐなかつた。

寒さや飢ゑや病気やと戦ひながら、私の詩が一つとして世に現はれないころに、私はこのバイブルをふところに苦しんだり歩いたりしてゐた。
いまその本をとつてみれば長い讃歎と吐息と自分に対する勝利の思ひ出とに、震ひ上つて激越した喜びをかんじるのであつた。

私はこれからのちもこのバイブルを永く持つて、物悲しく併し楽しげな日暮など声高く朗読したりすることであらう。
ある日には優しい友等とともに自分の過去を悲しげに語り明すことだらう。

どれだけ夥しく此聖書を接吻することだらう。

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Artist
室生 犀星
室生 犀星(むろう さいせい / 1889 - 1962年)は、石川県金沢市出身の詩人・小説家。
生後まもなく真言宗高野山派、千日山雨宝院にもらわれ、養父母のもとで育つ。
高等小学校を中退し、12歳で働きはじめた犀星は、文学への思いを募らせて20歳で単身上京、生活苦にあえぐなかで数々の詩を作った。
『愛の詩集』『抒情小曲集』などの抒情詩は大正期の詩壇を牽引し、さらに小説家としても活躍した。
Refference
愛の詩集

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  • 著者 室生犀星

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  • 出版 青空文庫

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星々が輝く槍の雨を降らせ 涙で天をあふれさせたとき
ウィリアム・ブレイク
『無垢と経験のうた』より
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Artist
ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク(1757-1827年)はイギリスの詩人・画家・版画家。
ブレイクは、ビジョンと呼ばれる幻視体験に基づいた特異な見解から同時代の人々からは狂人扱いされており、生前は詩人としては認められることはなく、一介の彫版師として生活した。
その後の批評家や読者からは、その表現力と創造性、そして作品内の哲学的・神秘主 義的な底流が高く評価されるようになり、ワーズ・ワース、コール・リッジらとともにイギリス・ロマン派の詩人の重要人物として知られている。
Refference
無垢と経験のうた

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  • 著者 ウィリアム・ブレイク

  • Warning: Undefined variable $single_number in /home/studiohas/has-mag.jp/public_html/wp-content/themes/HAS_Magazine_2025_1211/template/retreat/words-parts.php on line 70
  • 出版 青空文庫

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