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The Water is Wide
Pete Seeger
Pete
名もなき人々の物語が宿る歌

アメリカ・ニューヨーク生まれの伝説的なフォークシンガー、ピート・シーガーが残したアルバム『Pete』に収められた一曲。

この『The Water is Wide(広い河の岸辺)』という曲は、作者不詳の民謡として知られ、その起源はスコットランドにあると伝えられています。

その後、イギリスからアメリカに移住した移民によってアメリカに伝えられ、フォーク・リヴァイヴァリストとしてウディ・ガスリーと共に数々の民謡を収集していた、ピート・シーガーの手によって現代のフォークソングとして新たな命を吹き込まれ、多くのアメリカ人に知られてゆくことになりました。

ピート・シーガーは生前、あくまで自分自身はフォークソングを歌うシンガーの一人であって、真のフォーク・シンガーは民衆であると語っていました。
彼が奏でるギターに合わせ、多くの人々が主役となり合唱するこの曲は、まさにそんな彼の哲学を表現している一曲とも言えるかもしれません。

多くの人々が共に歌うことで、はじめて顕れる音楽の美しさ。
この曲は、かつて当たり前のように暮らしの中に音楽があり、誰もが歌い手であった、そんな古の人々の暮らしを思い起こさせてくれる一曲です。
歌い継がれる民謡の中に確かに息づく、かつての人々の暮らしに想いを馳せながら、耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

Artist
Pete Seeger
1919年から2014年までアメリカを拠点に活動した、アメリカ・ニューヨーク生まれのフォークシンガー、ピート・シーガー(Pete Seeger)。
ハーバード大学中退後に本格的な音楽活動を始め、黒人差別への抗議や反戦などの政治的な抗議メッセージを込めたプロテスト・フォークの旗手として注目を集める。
またアメリカ各地に残された民謡を収集するためアメリカ全土を放浪するなど、フォーク・リヴァイヴァリストとしての一面を持つ。
アメリカの現代フォークを代表する伝説的なフォークシンガーとして語り継がれ、フォークの神様とも称される音楽家ボブ・ディランにも多大な影響を与えた。
Refference
The Water is Wide
  • ArtistPete Seeger
  • AlbumPete
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美の遊行者
大手拓次
『藍色の蟇』より

そのむかし、わたしの心にさわいだ野獣の嵐が、
初夏の日にひややかによみがへつてきた。

すべての空想のあたらしいたねをもとめようとして南洋のながい髪をたれた女鳥のやうに、いたましいほどに狂ひみだれたそのときの一途の心がいまもまた、このおだやかな遊惰の日に法服をきた昔の知り人のやうにやつてきた。

なんといふあてもない寂しさだらう。
白磁の皿にもられたこのみのやうに人を魅する冷たい哀愁がながれでる。

わたしはまことに美の遊行者であつた。

苗床のなかにめぐむ憂ひの芽、望みの芽、
わたしのゆくみちには常にかなしい雨がふる。

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Artist
大手拓次
大手 拓次(おおてたくじ / 1887 - 1934年)は、群馬県出身の日本の詩人。
早稲田大学第三高等予科を経て、1907年9月、早稲田大学文学学術院英文科に入学。この頃より詩の発表を始める。
1916年にライオン歯磨本舗に就職。以後、生涯をサラリーマンと詩人の二重生活に捧げた。
生涯に書かれた詩作品は2400近くにのぼる。作品の発表を盛んに行っていたものの、生前に詩集が発刊されることはなかった。
Refference
藍色の蟇
  • 著者 大手拓次
  • 出版 青空文庫
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片町に更紗染めるや春の風
与謝蕪村
『郷愁の詩人 与謝蕪村』より
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Artist
与謝蕪村
与謝 蕪村(よさ ぶそん / 1716 - 1784年)は、江戸時代中期の日本の俳人・文人画家。
現在の大阪郊外、淀川に近い村で生まれ、20歳前に江戸へ出ると、巴人(はじん)という俳人に師事して俳句を学び始める。
28歳の頃、俳号として「蕪村」を名乗り始め、松尾芭蕉への憧れから10年に近い放浪生活を重ね、42歳のときに京都へ定住した。
絵と俳句の両面で独自の世界観を描き出し、近代の俳人や詩人たちにも大きな影響を与えた。
Refference
郷愁の詩人 与謝蕪村
  • 編集 萩原朔太郎
  • 著作 与謝蕪村
  • 出版 青空文庫
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Elemental Finding
Tara Jane O’Neil
白昼夢のような歌声に包まれて
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白昼夢のような歌声に包まれて

穏やかな光に包まれた午後のある日。 この音楽は、そんな昼下がりにかすかな眠気に誘われて、空想と現実を漂う白昼夢のような世界観を持つ、幻想的な一曲です。

「新たな光の射す場所」という意味を持つ「Where Shine New Lights」という名のアルバムに収録された一曲。
この曲は、アメリカ・ケンタッキー州出身の女性シンガーソングライターのTara Jane O’Neil タラ・ジェイン・オニールによって紡がれました。 

夢と現つを漂うようなこの曲は、忙しない日々から遠く離れた、もうひとつの時間を私たちの暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Tara Jane O’Neil
タラ・ジェイン・オニールは、アメリカ・ケンタッキー州ルイヴィル出身のシンガーソングライター / マルチ・インストゥルメンタリスト / 画家。
ニューヨーク、ポートランドを経て、現在はロサンゼルスを拠点に活動を行う。また自らの作品のジャケットのアートワークを手掛け、ロンドン、東京、ポートランドなど世界各地で展覧会を行うなど、画家としての一面も併せ持つアーティストである。
Refference
Elemental Finding
  • ArtistTara Jane O’Neil
  • AlbumTara Jane O’Neil
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The Moon Is a Harsh Mistress
Radka Toneff
澄み切った月の光のように
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澄み切った月の光のように

月の光に照らし出された夜のひと時。 淡い月の光が描く、どこか神秘的な世界。 この音楽は、そんな美しい月の光に寄り添うような一曲です。

「Fairytales」と名付けられたアルバムに収録された一曲。 この曲は、わずか30歳の若さでこの世を去ったノルウェー出身のジャズ・シンガー Radoka Toneff ラドカ・トネフによって紡がれました。

柔らかな月の光が辺りを包み、幻想的な時間が流れ出すように、神秘的で穏やかな美しさを暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Radka Toneff
ラドカ・トネフ(1952年6月25日-1982年10月21日)は、ノルウェー出身のジャズ・シンガー。
わずか3枚のアルバムを残し、30歳の若さでこの世を去る。哀しくも彼女にとって最後のアルバムとなった『Fairytales』は、発売後10万枚以上の売上を記録し、ノルウェーのジャズ・アルバムで最も売れた作品となる。
名実ともにノルウェーのジャズシーンを代表する伝説的なシンガーの一人である。
Refference
The Moon Is a Harsh Mistress
  • ArtistRadka Toneff
  • AlbumRadka Toneff
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或る風に寄せて
立原道造
『暁と夕の詩』より

おまへのことでいっぱいだった 西風よ
たるんだ唄のうたいやまない 雨の昼に
とざした窓のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら

おぼえてゐた おののきも 震えも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかってゐる

おまへのうたった とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだろう 誰が
それを忘れるのだろう……そうして

夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来る うすやみのなかに
おまへは 西風よ
みんななくしてしまった と

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Artist
立原道造
立原 道造(たちはら みちぞう / 1914 - 1939年 )は、東京都中央区出身の詩人であり、建築家としての足跡も残した。
若干13歳にして自選の歌集や詩集をまとめ、第一高等学校在学中から堀辰雄と室生犀星に師事。
その後、東京帝国大学工学部建築学科に入学。同学部の1学年下には、丹下健三が在籍していた。
建築の分野でも際立った才能を発揮し、在学中に辰野金吾賞を3回受賞するなど将来を嘱望された。
さらに、詩の分野でも『萱草に寄す』と『曉と夕の詩』を立て続けに出版し、第1回中原中也賞を受賞するも結核を患い24歳という若さで帰らぬ人となる。
Refference
暁と夕の詩
  • 著者 立原道造
  • 出版 青空文庫
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水のほとり
三富朽葉
『青空文庫』より

水のほとりにこぼれる
響ない真昼の樹魂こだま

物のおもひの降り注ぐ
はてしなさ。

充ちて消えゆく
もだしのこたへ。

水のほとりに生もなく死もなく、
声ない歌、
書かれぬ詩、
いづれかうるはしからぬ自らがあらう?

たまたま過ぎる人の姿、獣のかげ、
それは皆遠くへ行くのだ。

色、

光り、
永遠に続く中。

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Artist
三富朽葉
詩人。名は「きゅうよう」とも。早稲田大学英文科卒。1909(明治42)年、人見東明、加藤介春らとともに自由詩社をおこし、口語自由詩を唱道。機関誌の「自然と印象」、「早稲田文学」等に作品を発表。
1917(大正6)年、犬吠岬にて溺れた友人の今井白楊を助けようとし海に入るが、そのまま帰らぬ人となってしまう。享年27歳。あまりに早い最期だった。
Refference
青空文庫
  • 著者 三富朽葉
  • 出版 青空文庫
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Haru Spring
Harold Budd
響き渡る水の音のように
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響き渡る水の音のように

滴り落ちる水が反響し、美しい水音となって響き渡る。
この音楽は、まるで日本庭園の中にある水琴窟が奏でる音色のように、捉えどころのない自由な響きを紡ぐピアノ曲です。

「In The Mist」という名のアルバムに収められた一曲。
この曲は、アメリカの作曲家であり、ピアニストのハロルド・バッドによって紡がれました。

ささやくように揺らぐピアノの音色が穏やかな静寂を暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Harold Budd
ハロルド・バッド (1936年5月24日 - 2020年12月8日)は、アメリカ合衆国の作曲家であり、ピアニスト。
カリフォルニア大学ノースリッジ校で学士号を取得するもミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じ、一時作曲活動を休止。
その後、ブライアン・イーノのプロデュースのもと、再デビュー・アルバムをリリース。
「作曲とは無駄なものを取り除いていくこと」という理念をもとに、ラディカル・シンプリシティをテーマに独自のアンビエント・ミュージックのスタイルを追究した。
Refference
Haru Spring
  • ArtistHarold Budd
  • AlbumHarold Budd
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ひとの悲しみに
ウィリアム・ブレイク
『無垢と経験のうた』より

ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
私も悲しまずにはいられない。
ほかの人が苦しんでいるのを見たら、
慰める方法を考えずにはいられない。

涙がこぼれ落ちるのを見たら、
同じ気持ちにならずにはいられない。
父が子の泣く姿を見たら、
悲しみで胸がいっぱいにならずにはいられない。

子どもが幼い恐怖にうめき苦しんているのに、
母親は黙ってそれを聞いていることができるだろうか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

まして私たちみなに微笑みかけて下さる方が、
鷦鷯みそさざいの小さな悲しみを聞き
小鳥たちの憂いや悩みを聞き
子どもたち哀れな様子を聞いたら、

巣のかたわらに座って
彼らの胸に憐れみの心を注いだり、
揺りかごのそばに座って
子どもたちとともに涙せずにいられようか。

私たちの涙をぬぐうために、
昼も夜も私たちを見守らずにいられようか。
いやいやそんなことはできはしない。
決してできるわけがない。

その方はあらゆるものに歓びを与え、
その方は小さな子どもになられる。
その方は嘆きの人となって、
その方は悲しみをともにする。

あなたがため息をついているのにあなたを創った方が、
ため息をつかないなどと考えてはならない。
あなたが涙を流しているのにあなたを創った方が、
涙を流さないなどと考えてはならない。

おお、神は私たちに歓びをくださる、
神は私たちの悩みを打ち砕く、
私たちの悩みが消え去るまで、
神は私たちの傍らで悲しみつづける。

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Artist
ウィリアム・ブレイク
ウィリアム・ブレイク(1757-1827年)はイギリスの詩人・画家・版画家。
ブレイクは、ビジョンと呼ばれる幻視体験に基づいた特異な見解から同時代の人々からは狂人扱いされており、生前は詩人としては認められることはなく、一介の彫版師として生活した。
その後の批評家や読者からは、その表現力と創造性、そして作品内の哲学的・神秘主 義的な底流が高く評価されるようになり、ワーズ・ワース、コール・リッジらとともにイギリス・ロマン派の詩人の重要人物として知られている。
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無垢と経験のうた
  • 著者 ウィリアム・ブレイク
  • 出版 青空文庫
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隠沼
石川啄木
『詩』より

夕影しづかにつがひ白鷺しらさぎ下り、
槇の葉枯れたる樹下こした隠沼こもりぬにて、
あこがれ歌ふよ。

『その昔、よろこび、そは朝明、光の揺籃ゆりごに星と眠り、
悲しみ、汝こそとこしへ此処ここに朽ちて、
我がふくめる泥土ひづちと融とけ沈みぬ。』

愛の羽寄添ひ、青瞳うるむ見れば、
築地ついぢの草床、涙を我も垂れつ。

仰げば、夕空さびしき星めざめて、
しぬびの光よ、彩なき夢ゆめの如く、
ほそ糸ほのかに水底に鎖ひける。

哀歓かたみの輪廻めぐりなほこらへめ、
泥土ひづちに似る身ぞ。

ああさは我が隠沼こもりぬ
かなしみみ去る鳥さへえこそ来めや。

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Artist
石川啄木
石川 啄木(いしかわ たくぼく / 1886 - 1912年)は、岩手県出身の詩人。
啄木は雅号で、本名は石川 一(いしかわ はじめ)。
旧制盛岡中学校中退後、明治35(1902)年与謝野鉄幹の知遇を得て、『明星』に寄稿する浪漫主義詩人として頭角を現す。19歳の時に、処女作となる詩集『あこがれ』を刊行。
同時期に盛岡に帰郷し結婚するも、生活難のため母校の代用教員となる。
明治41(1908)年に上京、創作に没頭し小説を発表するが認められず、困窮の生活を送り、翌年に東京朝日新聞に就職。
明治43(1910)年に『一握の砂』を刊行、歌人としての地位を確立する。
また、同年に起きた幸徳事件(大逆事件)をきっかけに社会主義への関心を深め、文学評論も執筆したが、26歳の時に結核を患い帰らぬ人となる。
Refference
  • 著者 石川啄木
  • 出版 青空文庫
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私の魂は永遠をおもひ 私の肉眼は万物に無限の価値を見る
高村光太郎
『智恵子抄』より
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Artist
高村光太郎
高村 光太郎(たかむら こうたろう / 1883 - 1956年)は、東京都台東区出身の詩人・歌人・彫刻家・画家。
東京美術学校(東京藝術大学)卒業後、彫刻修業のためアメリカとヨーロッパへ渡る。
パリでロダンに出会い大きな影響を受け、日本を代表する彫刻家であり画家となったが生前に残した『道程』『智恵子抄』などの詩集が広く知られ、日本文学の近現代を代表する詩人として位置づけられている。
Refference
智恵子抄
  • 著者 高村光太郎
  • 出版 青空文庫
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