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隠沼
石川啄木
『詩』より

夕影しづかに番つがひの白鷺しらさぎ下り、
槇の葉枯れたる樹下こしたの隠沼こもりぬにて、
あこがれ歌ふよ。

『その昔、よろこび、そは朝明、光の揺籃ゆりごに星と眠り、
悲しみ、汝こそとこしへ此処ここに朽ちて、
我が喰はみ啣ふくめる泥土ひづちと融とけ沈みぬ。』

愛の羽寄添ひ、青瞳うるむ見れば、
築地ついぢの草床、涙を我も垂れつ。

仰げば、夕空さびしき星めざめて、
しぬびの光よ、彩なき夢ゆめの如く、
ほそ糸ほのかに水底に鎖ひける。

哀歓かたみの輪廻めぐりは猶なほも堪こらへめ、
泥土ひづちに似る身ぞ。

ああさは我が隠沼こもりぬ、
かなしみ喰はみ去る鳥さへえこそ来めや。

Artist
石川啄木
石川 啄木(いしかわ たくぼく / 1886 - 1912年)は、岩手県出身の詩人。
啄木は雅号で、本名は石川 一(いしかわ はじめ)。
旧制盛岡中学校中退後、明治35(1902)年与謝野鉄幹の知遇を得て、『明星』に寄稿する浪漫主義詩人として頭角を現す。19歳の時に、処女作となる詩集『あこがれ』を刊行。
同時期に盛岡に帰郷し結婚するも、生活難のため母校の代用教員となる。
明治41(1908)年に上京、創作に没頭し小説を発表するが認められず、困窮の生活を送り、翌年に東京朝日新聞に就職。
明治43(1910)年に『一握の砂』を刊行、歌人としての地位を確立する。
また、同年に起きた幸徳事件(大逆事件)をきっかけに社会主義への関心を深め、文学評論も執筆したが、26歳の時に結核を患い帰らぬ人となる。
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詩

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  • 著者 石川啄木

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  • 出版 青空文庫

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希望
土井 晩翠
『天地有情』より

沖の汐風吹きあれて
白波いたくほゆるとき、
夕月波にしづむとき、
黒暗くらやみよもを襲ふとき、
空のあなたにわが舟を
導く星の光あり。

ながき我世の夢さめて
むくろの土に返るとき、
心のなやみ終るとき、
罪のほだしの解くるとき、
墓のあなたに我魂たまを
導びく神の御聲みこえあり。

嘆き、わづらひ、くるしみの
海にいのちの舟うけて
夢にも泣くか塵の子よ、
浮世の波の仇騷ぎ
雨風いかにあらぶとも
忍べ、とこよの花にほふ

港入江の春告げて、
流るゝ川に言葉あり、
燃ゆる焔に思想おもひあり、
空行く雲に啓示さとしあり、
夜半の嵐に諫誡いさめあり、
人の心に希望のぞみあり。

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土井 晩翠
土井 晩翠(どい ばんすい / 1871 - 1952年)は、宮城県仙台市出身の詩人・英文学者。
本名は、土井 林吉(つちい りんきち)。

裕福な商家に生まれ、幼少期より学問への強い興味を持っていたが、商人に学問は不要と祖父の強い反対を受け、当初は学問の道を諦め、家業を継ぐために働き始める。だが学問への想いは消えず、仕事の合間を縫い、独り学び続けた。
その熱意にほだされ、最終的に祖父も進学の道を認め、本格的に学問への道に進む。
その後、東京帝国大学英文科に進み、学業の傍らで様々な詩を発表する。

男性的な漢詩調の詩風で、女性的な詩風の島崎藤村と並んで「藤晩時代」と称された。
瀧廉太郎の作曲の「荒城の月」の作詞者としても知られ、校歌も数多く作詞した。
英文学者としは、ホメロス、カーライル、バイロンなどを翻訳。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。
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天地有情

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  • 著者 土井 晩翠

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  • 出版 青空文庫

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歩み入る者にやすらぎを、去り行く人にしあわせを
東山魁夷
『追憶の古都』より
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Artist
東山魁夷
この言葉は、日本を代表する風景画家・東山魁夷の残した画集「追憶の古都」に残されていた言葉。
この本は、東山魁夷がドイツやオーストリアの古い町並みを旅しながら、その旅の中で感じた想いを自らの絵と文章で綴った本。
本の冒頭に、この言葉は添えられています。
Refference
追憶の古都

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  • 著者 東山魁夷

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  • 出版 ビジョン企画出版社

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Kie
Illuha
水面の光をすくい上げるように
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水面の光をすくい上げるように

明け方のまだ淡い朝日に照らされた水面の光。
この音楽は、そんな朝の光に溶かされ、淡いオレンジの輝きに染まる水面をすくい上げるように紡がれた音響作品です。

「Shizuku」というアルバムの中に収められた一曲。
この曲は、東京を拠点に活動する音楽ユニットILLUHA イルハによって紡がれました。

アルバムの名前に付けられた「雫」という言葉。
この言葉が表すように、水と光が織りなす美しい雫のような時間を私たちの暮らしに届けてくれます。

Artist
Illuha
イルハは、アメリカ生まれ、日本育ちの Corey Fuller コリー・フラーとブラジル生まれ、日本育ちの伊達伯欣による、東京を拠点にする音楽ユニット。
アコースティック楽器の音色と電子楽器による音の響きを重ね合わせながら、柔らかで美しい音響世界を作り上げている。
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Kie
  • ArtistIlluha
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Moon Smile
Jean-Philippe Collard-Neven
悲しみの向こうに流れるピアノ
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悲しみの向こうに流れるピアノ

終わりの見えない悲しみ。明けるともしれない夜の闇。
この音楽は、そんな暗闇に満ちた世界の先にある、確かな光を伝えるようなピアノ曲です。

「Between The Lines」というアルバムの中に収められた一曲。
この曲は、ベルギー出身のピアニスト・作曲家であるジャン・フィリップ・コラール・ネヴェン(Jean-Philippe Collard-Neven)によって紡がれました。

どこか憂いを湛えたピアノのメロディーの中に感じられる希望の光のような美しさ。
それは深い悲しみの先にある、確かな喜びを私たちに教えてくれているのかもしれません。

Artist
Jean-Philippe Collard-Neven
ベルギー出身のピアニスト・作曲家・即興演奏家のジャン・フィリップ・コラール・ネヴェン。
彼の手掛ける音楽は、クラシック、ジャズ、フレンチ・シャンソン、現代音楽など多岐に渡る。多様な音楽の表現を取り入れながら、ジャンルの枠組みを超えた幅広い活動を行なっている。
Refference
Moon Smile
  • ArtistJean-Philippe Collard-Neven
  • AlbumJean-Philippe Collard-Neven
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竹の林の歌
北原白秋
『観相の秋』より

わが宿の竹の林に、夕あかりかがよふ見れば、
その竹の湿る根ごとに、何か散り、深く光れり。

その節のひとつひとつに、何かまた留り光れり。
その笹のさみどりの葉に、何かまた揺れて光れり。

金色のその光るもの、こまごまと眼に染しみるもの、
雨ふりてあかれるのちは、とりわけて揺れてうつくし。
寂しくて見てゐるきはは、いよいよに消えてうつくし。

揺るるともただ見て居をらむ、消ゆるともまた見て居らむ、
堪へ堪へて日の暮るるまで、なほなほに寂しがりつつ。

わがやどの竹の林の夕あかり、裏山松の松風の音のこなたに。

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北原白秋
北原 白秋(きたはら はくしゅう / 1885 - 1942年)は、福岡県柳川出身の詩人・童謡作家・歌人。
本名は、北原 隆吉(きたはら りゅうきち)、
1904年に早稲田大学に入学と共に上京。明治39(1906)年与謝野寛に誘われ新詩社に参加、『明星』で活躍する。
治42(1909)に第一詩集『邪宗門』を発表。2年後に詩集「思ひ出」を発表すると名実ともに詩壇の第一人者となる。
生涯にわたり多数の優れた詩歌を残し、近代日本を代表する詩人とされている。
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観相の秋

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  • 著者 北原白秋

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  • 出版 青空文庫

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haru
Fennesz + Sakamoto
澄み渡る美しい時を纏うように
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澄み渡る美しい時を纏うように

青々と澄み切った湖面を包むように流れる霧。
この音楽は、そんな霧に包まれた静かな湖面に朧げに射す朝の光のような美しさを湛えた音響作品です。

「Cendre」フランス語で「灰」という意味を持つ名前のアルバムに収録された一曲。
この曲は、オーストリア出身の音楽家 クリスチャン・フェネスと坂本龍一の二人のコラボレーションによって生まれました。

静かに、ささやくように紡がれる美しい響きが澄み切った静謐な時間を私たちの暮らしの中に届けてくれます。

Artist
Fennesz + Sakamoto
オーストリア出身の音楽家 クリスチャン・フェネスと坂本龍一の二人によるコラボレーション・プロジェクト。
空間を響かせるような坂本龍一のピアノ。
クリスチャン・フェネスが奏でる艶やかなギターと情熱的なエレクトロニクス。
それぞれの音楽家の世界観が重なり合い、ふたつとない美しい音響作品を生み出している。
Refference
haru
  • ArtistFennesz + Sakamoto
  • AlbumFennesz + Sakamoto
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Little Gray Cat
Grouper
重なり合う幽玄な歌声を
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重なり合う幽玄な歌声を

アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト Grouperと Inca Ore の Splitアルバムからの一曲。それぞれの繊細な歌声がレイヤーのように重なり合い、幽玄な時間を紡ぎ出す美しい一曲です。

Artist
Grouper
アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト、Liz Harris リズ・ハリス のソロ・プロジェクト Grouper。
空間を満たすサウンドスケープとシンプルなピアノの音色を背景に、ささやくような歌声を重ね合わせ、幻想的な世界観を生み出している。
また音楽のみならず、自らのアルバムジャケットのアートワークも手掛けるなど、音楽とアートの垣根を越えた表現を行う。
Refference
Little Gray Cat
  • ArtistGrouper
  • AlbumGrouper
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Threnody
Goldmund
沈黙を響かせるピアノを
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沈黙を響かせるピアノを

澄み渡る空気と沈黙に包まれた静かな夜のひと時。 この音楽は、そんな静謐な時の中で、まるで水面に一滴の水が落とされるように紡がれたピアノ曲です。

「The Malady of Elegance」と名付けられたアルバムに収録された一曲。 この曲は、アメリカ・ペンシルベニア州出身の音楽家 キース・ケニフによるプロジェクト Goldmundの楽曲として紡がれました。

沈黙に捧げられるように静か紡がれるピアノの響きが静寂の中にある美しさを私たちに教えてくれます。

Artist
Goldmund
アメリカ・ペンシルベニア州出身の音楽家 キース・ケニフのソロプジェクト Goldmund ゴールドムンド。
彼の音楽表現は多岐に渡り、表現するジャンル毎に、Helios/Mint Julep/Keith Kenniffといった多様な名義を使い分け、様々作品を発表し続けている。
Goldmundという名義では、主にピアノを用い、空間を静かに響かせるような美しい音楽を制作している。
Refference
Threnody
  • ArtistGoldmund
  • AlbumGoldmund
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愛の詩集の本文より
室生 犀星
『愛の詩集』より

私の室に一冊のよごれたバイブルがある。
椅子につかふ厚織更紗で表紙をつけて背に羊の皮をはつて NEW TESTAMENT. とかいて私はそれを永い間持つてゐる。
十余年間も有つてゐる。

それは私の室の美しい夥しい本の中でも一番古くよごれてゐる。
私は暗黒時代にはこのバイブル一冊しか机の上にもつてゐなかつた。

寒さや飢ゑや病気やと戦ひながら、私の詩が一つとして世に現はれないころに、私はこのバイブルをふところに苦しんだり歩いたりしてゐた。
いまその本をとつてみれば長い讃歎と吐息と自分に対する勝利の思ひ出とに、震ひ上つて激越した喜びをかんじるのであつた。

私はこれからのちもこのバイブルを永く持つて、物悲しく併し楽しげな日暮など声高く朗読したりすることであらう。
ある日には優しい友等とともに自分の過去を悲しげに語り明すことだらう。

どれだけ夥しく此聖書を接吻することだらう。

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Artist
室生 犀星
室生 犀星(むろう さいせい / 1889 - 1962年)は、石川県金沢市出身の詩人・小説家。
生後まもなく真言宗高野山派、千日山雨宝院にもらわれ、養父母のもとで育つ。
高等小学校を中退し、12歳で働きはじめた犀星は、文学への思いを募らせて20歳で単身上京、生活苦にあえぐなかで数々の詩を作った。
『愛の詩集』『抒情小曲集』などの抒情詩は大正期の詩壇を牽引し、さらに小説家としても活躍した。
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愛の詩集

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  • 著者 室生犀星

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  • 出版 青空文庫

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When We Fail
Grouper
朝靄に包まれるような美しさを
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朝靄に包まれるような美しさを

木々の隙間から微かに零れる光が朝靄を静かに染める夜明け。
この音楽は、そんな美しい朝のひと時をすくい上げるように紡がれた一曲です。

この曲は、アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト Grouperの5作目となるアルバム「Dragging a Dead Deer up a Hill」の中に収録されています。

淡い光に包まれる、儚く美しい朝のひと時のような時間を私たちに届けてくれます。

Artist
Grouper
アメリカ・ポートランド出身の女性アーティスト、Liz Harris リズ・ハリス のソロ・プロジェクト Grouper。
空間を満たすサウンドスケープとシンプルなピアノの音色を背景に、ささやくような歌声を重ね合わせ、幻想的な世界観を生み出している。
また音楽のみならず、自らのアルバムジャケットのアートワークも手掛けるなど、音楽とアートの垣根を越えた表現を行う。
Refference
When We Fail
  • ArtistGrouper
  • AlbumGrouper
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