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幽玄な音色を奏でるサックス奏者 オデッド・ツールが新作「Here Be Dragons」を発表
© ECM Record

ニューヨークを拠点に活動するイスラエル出身のサックス奏者 Oded Tzur オデッド・ツールが新作「Here Be Dragons」をヨーロッパのコンテンポラリー・ミュージックを代表するドイツの音楽レーベル「ECM」より本年2020年2月に発表する。

オデッド・ツールは、1985年にオランダで生まれ、イスラエルの経済・文化の中心地であり、イスラエル国内で2番目に人口が多いとされる都市 テル・アビブ出身の音楽家である。
今回は、彼の新しい作品の紹介に加えて、この音楽家のこれまでの歩みを簡単に紹介したい。

オデッド・ツールは、幼少期より音楽に親しみ、その後、伝統的なサックスの巨匠であるGersh Geller ガーシュ・ゲラーの元で、様々な様式の厳格な音楽のトレーニングを受け、多様な音楽的感性を育んで行く中で、即興演奏への興味をきっかけに、今後の彼の音楽活動の基礎になっていく、インドの古典音楽に傾倒していくことになる。

2007年からは、ロッテルダム音楽院に入学し、インド音楽を専攻。
そして、インドの伝統楽器、バーンスリーの当代最高峰の奏者であるインド人音楽家 Hariprasad Chaurasia ハリプラサード・チョウラシアに師事し、様々な修練を重ねていった。
具体的な例としては、チョウラシアがバーンスリーで演奏した楽曲を、ツールがサックスで翻訳するように、演奏し直していくという気の遠くなるような無数のセッションが行われた。
チョウラシアの奏でる複雑なメロディーに対応していくことで、ツール自身の技術も呼応するように磨かれていったという。

ハリプラサード・チョウラシアのフランス・パリでのコンサートの様子

また後に、ニューヨークでジャズのカルテットを組むことになる、高校時代からの親友でもあるイスラエル出身のピアニスト Shai Maestro シャイ・マエストロは、この時のオデッド・ツールのことを振り返ってこう語っている。

「インド音楽を探求する過程で、1年間ずっとひとつのラーガを練習し続けて、瞑想をして、そんな生活を送っていたようなやつなんだ。その翌年にはまた別のラーガを1年かけて練習する。クレイジーだよね(笑)。ラーガっていうのは人生のいろんな部分を象徴したような音楽だから、ひとつの音から別の音へ行くのにヒエラルキーがあって、それを学ばなければならないディープな音楽なんだよね。 (CD Journal 2015年9月インタビュー記事より)」

そうしたある種、狂気とも言える探究の時間を経て、自身の新しいサックスのテクニックを生み出すことになる。
後に「The Middle Path」と自身が名付けるこの技術は、特定の微分音(いわゆるピアノなど鍵盤楽器での表現が難しい、ドとド♯の間にあるような、一般的な音程よりさらに細かい音程)を自在に表現することが出来るテクニックだ。
「The Middle Path(中道)」と名付けられたそのテクニックは、仏教の教えの根幹である、どこにも偏らない中道の考え方と呼応するかのように、特定の音程に定まることのない複雑で幽玄な、彼自身の音色をまさに表現している言葉と言えるのではないだろうか。

そして、2011年からニューヨークに拠点を移し、ベーシストのPetros Klampanis ペトロス・クランパニス、 ドラマーの Ziv Ravitz ジヴ・ラヴィッツ、ピアニストの Shai Maestro シャイ・マエストロらとともに Oded Tzur Quartet オデッド・ツール・カルテットを結成。
そして、自身のこれまでに育んで来たインド古典音楽の世界観とジャズを融合させながら、ニューヨークのみならず、イスラエル、ロシア、中国など各国で演奏を重ねていった。

Oded Tzur Quartet: Single Mother アルバム『Translator’s Note (2017)』より

そうした経験を重ねてい きながら、新たにピアニストとして現代イスラエルJAZZの旗手とも言われる Nitai Hershkovits ニタイ・ハーシュコヴィッツ 、ドラマーに Johnathan Blake ジョナサン・ブレイクを迎え、作られたのが今回の新作「Here Be Dragons」だ。

静かで幽玄な響きを持つ、オデッド・ツールのサックスの音色。
その響きの背景に流れる彼の歩んで来た物語にも耳を澄ませてみると、また違った音色が聞こえてくるのではないだろうか。
是非、そんな物語に想いを馳せながら、彼の奏でる奥深く、美しいサックスの音色に耳を傾けて欲しい。

Oded Tzur アルバム『THere Be Dragons (2020)』より

「Here Be Dragons」
artist : Oded Tzur
release : 2020.2.14
label : ECM
price : ¥2,530
購入・ストリーミング
購入・ストリーミング
Here Be Dragons
Oded Tzur
Oded Tzur / オデッド・ツール
イスラエル出身のサックス奏者。幼少期より音楽に取り組み、様々な様式の音楽を貧欲に学んで行く中で、即興音楽をきっかけとして、インド古典音楽に傾倒していく。その後、バーンスリーの当代最高峰の奏者であるインド人音楽家 Hariprasad Chaurasia ハリプラサード・チョウラシアに師事し、長年の修行を経て、自身奏法である「The Middle Path」を作り上げる。2011年より活動の拠点をニューヨークに移し、自身のジャズ・カルテットを結成し、アメリカのみならず、世界各地で演奏活動を行なっている。
Hariprasad Chaurasia / ハリプラサード・チョウラシア
1938年生まれ、インドのウッタル・プラデーシュ州出身の音楽家であり、インドの伝統楽器であるバーンスリー奏者。当代最高峰のバーンスリー奏者と言われ、世界各地で演奏活動を行う。名実ともに現代インドを代表する音楽家。
ECM
1969年 マンフレート・アイヒャーにより設立されたドイツの音楽レーベル。 「沈黙の次に美しい音」をコンセプトに掲げ、わずかにリバーブのかかった繊細な音色が レーベル独自の空気感を生み出している。 一貫したアルバムジャケットのアートワークの美しさへの評価も高く、音楽とビジュアルが統一された 総合的な世界観を創り上げている稀有な音楽レーベルである。
text : STUDIO HAS
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幽玄な音色を奏でるサックス奏者 オデッド・ツールが新作「Here Be Dragons」を発表
2020.2.7